鍼灸院のSEO対策では、ホームページに「美容鍼灸」「東洋医学」と書いてよいのか迷う場面があります。自院のウェブサイトは、原則としてあはき法の広告規制の対象外です。ただし施術所の名称には別の制約がかかります。本記事で扱うのは、あはき法とあはき・柔整広告ガイドラインに基づく広告規制と名称のルールです。読み終えれば、自院サイトで書ける範囲を条文に照らして判断できます。
なぜ鍼灸院のSEO対策が必要なのか――はり・きゅうの施術所は10年で約1.4倍

鍼灸院のSEO対策を考えるうえで、まず押さえたいのが業界全体の数字です。厚生労働省の衛生行政報告例を見ると、はり・きゅうの施術所はこの10年で増え続けている一方、柔道整復の施術所は平成30年ごろを境に伸びが止まりました。同じ商圏に施術所が増えるほど、検索結果で見つけてもらえるかどうかが来院数を左右します。まずは、10年で何がどれだけ変わったのかを数字で確認しましょう。
「はり及びきゅうを行う施術所」は35,494か所、10年で約1.4倍に
厚生労働省の令和6年衛生行政報告例は、「「はり及びきゅうを行う施術所」は35,494 か所で、前回に比べ1,604 か所(4.7%)増加している。」としています。平成26年の25,445か所から数えると、10年で約1.4倍。一方、柔道整復の施術所は令和4年から令和6年でわずか8か所(0.0%)の増加にとどまりました。 伸び続ける業態と頭打ちの業態が、同じ統計の中に並んでいます。
就業はり師は136,736人、就業きゅう師は134,730人
同じ報告例は、「就業はり師(以下「はり師」という。)は136,736 人で、前回に比べ5,250 人(4.0%)増加している。」「就業きゅう師(以下「きゅう師」という。)は134,730 人で、前回に比べ5,252 人(4.1%)増加している。」と記録しています。増えているのは施術所だけではなく、担い手も同様。 はり師ときゅう師はほぼ同数ですが、統計は資格ごとの集計で、2つを足して施術者数とはできません。
出典:令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況 結果の概要「3 就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所」|厚生労働省
鍼灸院のウェブサイトは、原則として広告規制の対象外――ただし広告を出すとサイトごと規制対象になる

整骨院にも似た規制があり、「整骨院のSEO対策|柔道整復師法の広告規制とサイトの線引きを解説」で3要件の詳細を扱いました。医療機関はウェブサイトも規制対象になり得る点は「クリニックのSEO対策はどこまで書ける?医療広告等ガイドラインから解説」のとおりですが、あはき法に医療法のような限定解除の条文はありません。その代わりに、ウェブサイトそのものが原則として広告規制の対象外という整理になっています。
広告の該当性は「誘引性・特定性・認知性」の3要件で判定される
あはき・柔整広告ガイドラインは、あはき師法第7条の対象となる広告の該当性について、「次の①から③までの要件のいずれも満たす場合に該当するものと判断されたい。」としています。挙がるのは「① 利用者を施術所等に誘引する意図があること 【誘引性】」「② 施術者の氏名又は施術所等の名称が特定可能であること 【特定性】」「③ 一般人が認知できる状態にあること 【認知性】」の3つ。すべて満たして初めて広告に該当します。
自らURLを入力・検索して見にいくウェブサイトは、原則として広告に該当しない
同ガイドラインは、「インターネット上の施術所等のウェブサイト等は、当該施術所等の情報を得ようとの目的を有する者が、自らURLを入力したり、検索サイトで検索した上で閲覧するものであるため、本指針Ⅱの1に掲げた③の「認知性」を満たさないものとして、従来情報提供や広報として扱ってきた。」と整理しました。検索から来る自院サイトには、看板やチラシに書けない情報を載せられます。
「鍼灸」で検索連動広告を出すと、その広告自体が規制対象になる
ただし同ガイドラインは、「検索サイト上で例えば「鍼灸」を検索文字として検索した際にスポンサーとして表示されるもの」について、3要件をいずれも満たす場合には広告として扱うとしています。検索文字の例に挙がっているのは、まさに「鍼灸」です。 鍼灸院が広告を出す場面が、そのまま規制の説明に使われています。自然検索での表示と、費用を払って広告枠に表示させることは、この指針の中では別扱いです。
広告からリンクした先のサイト本体も、広告として扱われる
さらに同ガイドラインは、「バナー広告等にリンクしている施術所等のウェブサイト等についても、バナー広告等と一体的な関係にあることによって一般人が容易に認知できる状態にあることから、本指針Ⅱの1に掲げた③の要件を満たすものであり」と述べています。広告費をかけるほど、リンク先のサイト本体まで書ける内容が狭くなります。
リスティング広告とは何か
厚生労働省はリスティング広告について、「「リスティング広告」とは、広告サービスにお金を払って検索結果に表示できる広告のこと。検索エンジンの自然検索結果の上部や下部の広告枠に表示できる広告がリスティング広告となる。」と定義しています。費用を払って上位表示させた場合の話であり、通常のSEO施策そのものが広告に当たるとは書かれていません。
あはき法第7条の広告可能事項は5号――整骨院の4号とは中身が違う

あはき法の広告可能事項は第7条第1項に定められています。柔道整復師法第24条第1項と役割は同じでも、号の数と中身までは揃っていません。整骨院とひとまとめに語られがちな鍼灸院ですが、根拠になる法律は最初から別物です。あはきは5号、柔整は4号。 この差がどこから生まれるのかを、条文の文言に沿って確認します。
「左に掲げる事項」以外の広告は一切禁止
あはき法第7条第1項は、「あん摩業、マツサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。」と定めています。「左に掲げる事項」以外は、すべて広告不可です。 主語が「何人も」である点も見落とせず、施術者本人にとどまらず広告を出す側にも及びます。
広告可能な5号――「業務の種類」の号があはき法固有
各号は、「一 施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所」「二 第一条に規定する業務の種類」「三 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項」「四 施術日又は施術時間」「五 その他厚生労働大臣が指定する事項」の5つ。二号「第一条に規定する業務の種類」が、あはき法固有の号です。 施術所の名称が三号に置かれていることは、後述する名称のルールを読むうえでの前提になります。
第7条第2項――名称の中身にも技能・経歴の縛りが及ぶ
第2項は、「前項第一号乃至第三号に掲げる事項について広告をする場合にも、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。」と定めています。第1項で「施術所の名称」が広告できるとされていても、その名称の中身が技能や施術方法を含んでいれば、この第2項に触れます。 「美容鍼灸」「不妊鍼灸」といった屋号が広告不可になるのは、この規定が理由です。
柔整の4号との違い――「業務の種類」の号があるかどうか
柔道整復師法第24条第1項は「一 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所」「二 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項」「三 施術日又は施術時間」「四 その他厚生労働大臣が指定する事項」の4号です。あはき法の二号に当たる号がなく、この号の有無が、あはき5号・柔整4号という差になっています。 第2項が及ぶ範囲も、あはきは「第一号乃至第三号」、柔整は「第一号及び第二号」で違います。
出典:あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第七条|e-Gov法令API、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第二十四条|e-Gov法令API
厚生労働大臣が指定する事項――「もみりようじ」「やいと、えつ」という表記でしか書けない

第7条第1項五号の「その他厚生労働大臣が指定する事項」は、平成11年厚生省告示第69号が定めています。指定されているのは9項目。施術の呼び方から駐車設備の案内まで幅があります。読みやすさを優先して現代語に置き換えたくなる項目もありますが、この告示は法令上の古い表記のまま生きており、言い換えた時点で広告可能事項の枠を外れます。 何がどの表記で指定されているのかを、順に見ていきましょう。
告示の原文表記――「もみりようじ」「やいと、えつ」
同告示は、「一 もみりようじ」「二 やいと、えつ」「三 小児鍼(はり)」を指定事項に挙げています。「もみほぐし」「お灸」「小児はり」に言い換えると、告示に列挙された事項ではなくなります。 この告示は平成十一年四月一日から適用され、それ以前の昭和二十六年の告示は廃止されました。読者に伝わりやすい言葉を使いたい場合は、広告に当たらない自院サイトの本文側で補うのが現実的な運用になります。
予約・休日夜間・出張・駐車設備も指定事項
同告示はほかに、「六 予約に基づく施術の実施」「七 休日又は夜間における施術の実施」「八 出張による施術の実施」「九 駐車設備に関する事項」も広告可能な事項として挙げています。運用面の事項は、原文を言い換えなくても書ける項目です。 夜間の受付や駐車場の有無は来院の判断材料になりやすく、看板やチラシにも載せられる数少ない情報にあたります。
療養費支給申請の広告には条件が付く
五号にあたる療養費支給申請については、「五 医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)」という条件が付きます。「保険が使えます」だけを単独で掲げることはできません。 括弧の中が条件で、医師の同意が要る旨を並べて示してはじめて広告可能な事項です。柔道整復では同じ条件が脱臼・骨折の患部に限られており、併設院では業態ごとに判定が分かれます。
広告できるのは「届け出た」という事実だけ
四号の届出について、あはき法第9条の2第1項は「施術所を開設した者は、開設後十日以内に、開設の場所、業務に従事する施術者の氏名その他厚生労働省令で定める事項を施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない。」と定めています。「認可」「公認」といった言い換えは、告示の枠外です。 届出は開設者の義務であって、行政のお墨付きを意味するものではありません。
出典:あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第七条第一項第五号の規定に基づくあん摩業等又はこれらの施術所に関して広告し得る事項(平成11年厚生省告示第69号)|厚生労働省、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第九条の二|e-Gov法令API
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師は別の免許――「マッサージ」表示は保有免許で決まる

「鍼灸院」という看板を掲げていれば施術メニューは自由に書ける、と考えると足をすくわれます。あはき法第1条は3つの免許をそれぞれ別に定めており、広告可能事項の二号「業務の種類」は、保有する免許の範囲を示す事項です。「マッサージ」という表示ができるかどうかは、保有している免許で決まります。 免許と表示がどう対応するのかを、条文とガイドラインから確認します。
それぞれ別個の免許
あはき法第1条は、「医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。」と定めています。はり師免許・きゆう師免許だけでは、あん摩・マッサージ・指圧を業とできない点に注意。
「国家資格保有」は明示できるが「東洋医学療法」「整体」「カイロ」は不可
あはき・柔整広告ガイドラインは、「ア あん摩マッサージ指圧師、はり師(鍼師)、きゅう師(灸師)」と「ウ 上記のア又はイと併せて「国家資格保有」の表記」を広告可能な事項に挙げる一方、「ア 東洋医学療法、伝統鍼灸、漢方、整体、カイロ等といった、あはき・柔整以外の業務の種類や、これらの民間資格を保有している旨」は広告不可としています。書けるのは免許の種類まで。免許にない業務や民間資格は対象外です。
就業者数の伸び方には資格ごとに差がある
就業はり師は「136,736 人で、前回に比べ5,250 人(4.0%)増加」、就業きゅう師は「134,730 人で、前回に比べ5,252 人(4.1%)増加」と報告されています。10年でみると、はり師は108,537人から136,736人へ増えた一方、あん摩マッサージ指圧師は113,215人から119,703人とほぼ横ばいです。
出典:あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条|e-Gov法令API、あはき・柔整広告ガイドライン|厚生労働省、令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況 結果の概要「3 就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所」|厚生労働省
施術所の名称に入れられる語・入れられない語

施術所の名称は、あはき法第7条第1項三号の広告可能事項にあたります。ところが第2項の縛りが名称の中身にまで及ぶため、書ける範囲は大きく制限されます。 ガイドラインは広告可能な名称を4パターン、広告不可な名称を8カテゴリに分けて例示しており、その分かれ目は数文字の違いです。まず、利用者が認知できる名称であるための3要素から確認しましょう。
名称に必要な3つの認知要素
あはき・柔整広告ガイドラインは、施術所の名称について「・ 国家資格保有者による、あはき・柔整の業態であること」「・ 法令に基づき都道府県に届けられ適法であること」「・ 医療機関と紛らわしい名称を用いていないこと」について利用者が認知できる名称である必要があるとしています。この3要素が、以降の可否の判断基準です。
広告可能な名称――業態+治療院/療院
広告可能な名称の例として、ガイドラインは「イ 提供する施術業態(マッサージ、はり、きゅう等)に「治療院(所)」「療院(所)」を付けること」を挙げ、「○○鍼灸治療院、○○鍼灸療院、○○鍼灸治療所 等」を例示しています。業態を明示した「治療院」「療院」の組み合わせが、広告可能な名称の中心です。 ほかに、施術業態を特定せず「施術所(院)」とする形や、業務の種類だけを示す形も挙がっています。
施術所が併設されている場合は併記できる
施術所が併設されている場合は、「エ 施術所が併設されている場合等に併記すること」として「○○接骨院・鍼灸院、○○接骨院・○○鍼灸院 等」も可能とされています。業態を「・」で併記する形も、広告可能な名称です。 接骨院と鍼灸院を同じ建物で運営する事業者にとっては、屋号を一つにまとめるより併記するほうが安全な選択になります。
広告不可な名称8カテゴリ――「美容鍼灸」「不妊鍼灸」も例に含まれる
ガイドラインは広告不可な名称を8つのカテゴリで示しています。特に鍼灸院に関わるのは「オ 施術内容・技能・方法を含んでいる名称」で、例は「東洋医学、温鍼、中国鍼灸、美容鍼灸、不妊鍼灸、更年期障害、背骨専門、漢方、気功、無痛治療、電気療法 等」です。「美容鍼灸」「不妊鍼灸」は、施術所の名称としては広告不可な名称の例に挙がっています。
言い換えても、施術所外への表示も不可
さらにガイドラインは、「英語にしたり、一般的に同じ意味と認識される別の用語・呼称を用いる等表現方法を変えても表示は不可であること、また、看板、掲示物及び装飾等を含め施術所外への表示も不可であること」に留意するよう求めています。言い換えでの回避や、看板・掲示物での表示も不可です。 加えてガイドラインは「上記以外は広告不可」としており、8カテゴリは限定列挙ではなく、特に留意すべき例にすぎません。
「○○療院」は不可でも「○○鍼灸療院」は可
名称の可否は紙一重です。「ア 「病院又は診療所等」と誤解する恐れがあるものを含んでいる名称」の例には「○○(施術業態を含まない)治療院」「○○療院」が挙がる一方、「イ」の例には施術業態を冠した「○○鍼灸療院」が可能とされています。 分かれ目は、施術業態を名称に冠しているかどうか。片方だけを読むと可否が矛盾して見えるため、必ず両方を突き合わせて判断してください。
「○○鍼灸接骨院」は不可でも「○○接骨院・鍼灸院」は可
同様に「ウ 提供する施術業態が混ざっている名称」の例「○○鍼灸接骨院」は不可ですが、「エ」の「○○接骨院・鍼灸院」のように業態を「・」で併記する形は可能とされています。混ぜるか、併記するかが分かれ目です。 一文字の差に見えて、どの業態の施術所なのかを利用者が判別できるかどうかという理由に基づく区別です。
「レディース鍼灸」が不可な理由
ガイドラインは、キャッチフレーズの例として「レディース鍼灸」を挙げ、「あはき師法第7条第2項、柔整師法第24 条第2項で禁止されている施術方法や女性特有の疾患を暗示させる表現であり、認められない。」としています。女性向けだからではなく、施術方法や疾患を暗示する点が理由です。
なお、「○○鍼灸院」という屋号単体の可否は、広告可能・不可能いずれの例示にも明示されておらず、国として結論は示されていません。
保険と症例のページで書ける範囲――療養費6疾病と医師の同意

保険と自費の書き分けは業種を超えた共通課題です。国家資格を要する鍼灸院とは異なる規制構造を持つ整体院については、「整体院のSEO対策|広告規制の範囲と症状表現の注意点を解説」で扱いました。ここでは、はり・きゅうの療養費に絞って確認します。押さえておきたいのは、療養費が保険のルール、告示が広告のルールという点。 二つは別の制度で、混ぜて書くと両方の意味が壊れる点に注意してください。
療養費の対象は6疾病
厚生労働省のリーフレットは、「神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症について、保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、保険者は保険医による適当な治療手段のないものとし療養費の支給対象として差し支えないものとされています。」としています。支給対象となる疾病は、慢性的な疼痛を主訴とする慢性病であって、保険医による適当な治療手段のないものです。
「6疾病だから」で症状ページの本数を決めない
療養費の対象疾病は、広告のルールとは別の話です。ウェブサイトは原則として広告規制の対象外であり(前述)、療養費の対象疾病とサイトで扱える症状の範囲は連動しません。 対象が6疾病だから症状ページも6本しか作れない、という接続は誤りです。保険の話と、検索から来る読者に向けて書ける情報の範囲は、切り分けて設計してください。
保険の広告は「医師の同意が必要」とセットでのみ可能
広告できる事項としての告示は、「五 医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)」という条件を付けています。「保険が使えます」だけを単独で掲げることは告示の枠を外れます。 看板やチラシに保険のことを書くのであれば、医師の同意が要る旨を必ず並べて示してください。
同意書の有効期間は6ヶ月、再同意にも診察が必要
厚生労働省のリーフレットは、「同意書に基づく療養費の支給が可能な期間は6ヶ月です。」としています。再同意の場合も、施術の同意には保険医の診察と同意書(文書)の交付が欠かせないと同リーフレットは述べています。期間の満了だけを見て、診察や文書の交付を省略できるわけではない点に注意。 保険の案内ページを作るなら、この更新の手順まで書いておくと問い合わせが減ります。
同じ疾病で治療中は、療養費を受けられない
厚生労働省は、「同意する疾病について、処置や投薬等の治療(ただし、同意書の交付に必要な診察・検査及び療養費同意書交付は除く。)を行う場合には、治療が優先されるため、患者は、はり、きゅうの療養費の支給を受けることができません。」としています。同じ疾病で医療機関にかかっている間は、療養費の支給対象外です。
出典:はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の同意書の取扱い(保険医療機関及び保険医の皆様へ)(令和7年4月版)|厚生労働省、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第七条第一項第五号の規定に基づくあん摩業等又はこれらの施術所に関して広告し得る事項(平成11年厚生省告示第69号)|厚生労働省
名称に使えない語を、サイトの見出しには使えるのか――ガイドラインが答えていない領域

ここまでの名称ルールを踏まえると、次の疑問が浮かびます。「美容鍼灸」「不妊鍼灸」は施術所の名称として使えないなら、サイトの見出しにも使えないのか。 検索需要のある語をどこまで扱えるかに直結する論点でありながら、公開されている解説の多くはここに触れていません。以下では、確定していることと確定していないことを分けて整理します。
確定していること――名称としては不可、言い換えも施術所外の表示も不可
「オ 施術内容・技能・方法を含んでいる名称」の例に「美容鍼灸、不妊鍼灸」が挙がっている点は確定です。「英語にしたり、一般的に同じ意味と認識される別の用語・呼称を用いる等表現方法を変えても表示は不可であること、また、看板、掲示物及び装飾等を含め施術所外への表示も不可であること」も同様。ただし原文が例示するのは看板・掲示物・装飾であり、ウェブサイトの見出しやタイトルタグへの言及はありません。
確定していないこと――ガイドラインが答えていない領域
ウェブサイトは、原則として広告に該当しないという整理が別に存在します(前述)。「施術所外への表示」にウェブサイトの見出しが含まれるかどうかは、ガイドライン本文に明示がありません。 本記事は「見出しにも使えません」とも「使えます」とも断定しません。二つの整理が交わる領域に公式な答えがない以上、リスクの所在を理解したうえで、判断が必要な場合は専門家への相談を検討してください。
実務論点――効果を暗示するドメイン名
暗示的な表現の扱いとして、ガイドラインはドメイン名の例も挙げています。架空の例として、「肩こり治る(katakorinaoru)とあり、肩こりが治癒することを暗示している。施術の効果に関することは、広告可能な事項ではなく、また、施術の効果を保証しているとの誤認を与える恐れがあり、認められない。」としています。効果を暗示するURLは、広告として扱われる場面で問題です。
「休診日」「初診」「往診」は不可――「休療日」「初検」「往療」が可
施術日・時間の表記では、「ウ 診(休診日、初診、再診、往診 等)と表記すること」は不可とされ、代わりに「ウ 施術のほか初検、再検、往療、施療と表記すること」が広告可能な事項として挙げられています。医療と紛らわしい「診」の字は使えません。 「休診日」「初診」「往診」は多くの施術所サイトで見かける語ですが、正しくは「休療日」「初検」「往療」。営業案内やフッターに残っていないか、一度確認してみてください。
Googleビジネスプロフィールのビジネス名には二重の制約がかかる

SEOとMEOのどちらを優先すべきかという一般論は、「美容室のSEO対策|MEOとの優先順位と薬機法表示の注意点を解説」に譲り、ここではビジネス名にかかる規制に絞って整理します。Googleのポリシーとあはき法の名称規制は、鍼灸院において正面からぶつかります。 Googleは看板の名称を使うよう求め、あはき法は看板に使える名称そのものを絞り込んでいるためです。
Googleは「看板で使っているブランド名」を求める
Googleビジネスプロフィールヘルプは、「オンラインでユーザーに見つけてもらうには、正確なビジネス名(店舗、ウェブサイト、ビジネスレターなどで一貫して使用し、顧客に認知されている、実際のビジネスの名称)を使用します。」と求め、さらに「実際のビジネスで一貫して使用し、認知されている(看板やビジネスレターなどで使用している)ブランド名を使用します。」とも。ビジネス名の設計は、屋号の設計と不可分です。
「サービスまたは商品の情報」は含められない
Googleのガイドラインは、ビジネス名に追加できない情報の例として、サービスまたは商品の情報を挙げました。所在地の情報を付け足すこともできず、不可の例には「神田駅前の ABC スポーツジム」が、可能な例には「ABC スポーツジム神田」が挙げられています。施術内容を含むビジネス名は、Googleのポリシーとあはき法の名称規制という二重の制約を受ける立場です。
知名度の材料は被リンク数とクチコミ数
ローカル検索の順位について、Googleは「ローカル検索結果は、主に関連性、距離、知名度に基づいて表示されます。」と説明しました。知名度の中身は「ビジネスにリンクしているウェブサイトの数やクチコミの数などの情報にも基づいています。」とされ、被リンクとクチコミが材料の一つです。ビジネス名に語を足せない分、外部からの評価を積む余地は残されています。
ただし、クチコミの集め方には規制がかかる
あはき・柔整広告ガイドラインは、掲載料・広告料を支払っている口コミサイトや、決定基準が恣意的なランキングについて、3要件をいずれも満たす場合には広告として扱うとしました。クチコミを増やす取り組みは、この規制と両立させなければなりません。 「クチコミを集めましょう」で終わらせず、集め方まで確認してください。あわせて、Googleもランキングを上げるための金銭の受け取りには応じないと明言しています。
出典:Google に掲載するビジネス情報のガイドライン|Google ビジネス プロフィール ヘルプ、Google のローカル検索結果のランキングを改善するヒント|Google ビジネス プロフィール ヘルプ、あはき・柔整広告ガイドライン|厚生労働省
合同会社ワンブリマーケティングについて
合同会社ワンブリマーケティングは、SEO・オウンドメディア運用・生成AI活用支援を専門とする企業です。鍼灸院のように、あはき法という専門的な広告規制と療養費という保険制度を同時に踏まえたコンテンツ設計が必要な事業者を中心に、キーワード設計から記事制作、屋号やビジネス名の設計まで一貫して支援しています。自院に合った進め方を相談したい方は、お問い合わせからご連絡ください。
鍼灸院のSEO対策についてよくある質問
Q1. 鍼灸院のSEO対策は何から始めればいいですか?
まず、自院サイトが原則として広告規制の対象外であることを踏まえ、看板やチラシには書けない施術方法の説明や院長の経歴など、検索から来る読者に向けた情報を充実させることから始めます。あわせて、屋号やビジネス名が名称規制に触れていないかも早い段階で確認しておくと、後から書き直す手間を避けられます。 リスティング広告を使う場合は、リンク先のページが広告可能事項の範囲に収まっているかも点検してください。
Q2. 鍼灸院の広告規制はどのようなものですか?
あはき法第7条第1項は、広告してよい事項を5号に限定するポジティブリスト方式を採っています。第2項により、名称を広告する場合でも技能・施術方法・経歴は対象外です。 五号の指定事項を定めるのは平成11年厚生省告示第69号で、「もみりようじ」のような法令上の古い表記のまま生きています。令和7年2月18日には、あはき・柔整広告ガイドラインも発出されました。
Q3. 整骨院のSEO対策と何が違いますか?
根拠となるガイドラインは共通ですが、条文上の号の数が異なります。あはき法は5号、柔道整復師法は4号で、あはき法だけが「第一条に規定する業務の種類」という号を持ちます。 療養費の同意条件も範囲が別で、あはきは「申請」全般に医師の同意が要る一方、柔整は脱臼・骨折の患部に限定です。併設院では、業態ごとに別々の判定が要ります。
Q4. 「美容鍼灸」「不妊鍼灸」を屋号やビジネス名に入れてもよいですか?
施術所の名称としては、「オ 施術内容・技能・方法を含んでいる名称」の例に「美容鍼灸、不妊鍼灸」が挙げられており、広告不可な名称の例です。言い換えや英語表記にしても、看板や掲示物を含めた施術所外への表示は不可とされています。 一方、記事の見出しやタイトルタグで同じ語を使えるかどうかは、ガイドライン本文に明示がなく、本記事も断定しません。屋号に入れることは避けてください。
Q5. 保険が使える施術はサイトにどう書けばよいですか?
療養費の対象は、神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症の6疾病です。「保険が使えます」とだけ書かず、医師の同意が要る旨を明示してはじめて広告可能な事項になります。 同意書の有効期間は6ヶ月。更新のたびに保険医の診察を受け、同意書の交付を受け直します。同じ疾病で医療機関にかかっている場合は、療養費を受けられない点も押さえておきましょう。
まとめ:あはき法の広告規制と名称のルールを踏まえて鍼灸院のSEOを進めよう
鍼灸院のウェブサイトは、原則としてあはき法の広告規制の対象外であり、看板やチラシには書けない施術方法の説明や経歴を書ける点が強みです。ただし施術所の名称には別の厳しい制約があり、「美容鍼灸」「不妊鍼灸」といった語は名称としては広告不可な例に挙がっていること、リスティング広告を出すとリンク先のサイトまで広告として扱われることは見落とせません。 まずは自院の屋号やビジネス名を、本記事の可否の整理と照らして点検することから始めてみてください。
施術系の店舗ビジネスでは、開業数が伸びている業種ほど、検索経由の集客が新規顧客獲得の主戦場になりやすいと感じています。ある施術系の事業者の支援では、担い手の数が増えている一方で来店の多くが検索経由に集中しており、紹介や通りがかりだけに頼る集客では頭打ちになっていました。担い手が増える局面ほど、早い段階で検索からの導線を整えておくほど、後の差につながると考えています。