矯正歯科のSEO対策では、自由診療が中心のため何をどこまでサイトに書けるか迷う医院が少なくありません。歯列矯正は、実は限定解除なしで広告できる治療の方法として指針に名指しされています。本記事で一次資料から整理するのは、広告できる範囲、専門医資格の扱い、令和8年6月に広がった保険適用の最新範囲の3点です。読み終えれば、自院サイトの記載可否を条文に照らして判断できるようになります。
矯正歯科のSEOが直面する競争環境――標榜数は3年で2.9%増、歯科診療所全体は減少

矯正歯科が診療科名として広告できる根拠は、「歯科医院のSEO対策は何が特殊?診療科名と自由診療の制約から解説」で扱いました。本記事では、広告できる治療の範囲、専門医資格の扱い、保険適用の最新範囲という、矯正歯科に固有の3つの論点に絞って整理します。看板を掲げる医院が増える中、まずは矯正歯科が置かれている競争環境の実数から確認していきましょう。
矯正歯科を標榜する歯科診療所は26,194施設・全体の39.2%(令和5年10月1日現在)
厚生労働省の令和5年医療施設調査によれば、令和5年10月1日現在、歯科診療所の総数66,818施設のうち、矯正歯科を標榜する施設は26,194施設にのぼります。これは歯科診療所全体の39.2%にあたる数字です。 令和2年の25,455施設と比べると739施設、率にして2.9%の増加で、歯科診療所が減る中で標榜数を伸ばした数少ない科目のひとつです。
歯科診療所全体は減少、矯正歯科と歯科口腔外科の標榜は増加している
歯科診療所の総数は令和2年の67,874施設から令和5年の66,818施設へ、1,056施設・1.6%減少しました。「歯科」を標榜する施設も66,338施設から65,230施設へ1,108施設・1.7%減っています。この間に標榜数が増えたのは矯正歯科と歯科口腔外科の2科目で、歯科口腔外科は3.7%増です。 令和6年の歯科診療所全体は66,378施設で、前年から440施設減少しています。
出典:令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況 結果の概要 Ⅰ医療施設調査|厚生労働省
歯列矯正は医療広告等ガイドラインの具体例に載っている――限定解除なしで広告可能な治療の方法

広告可能事項の限定解除に必要な4要件の一般論は、「クリニックのSEO対策はどこまで書ける?医療広告等ガイドラインから解説」で扱いました。施術名や装置の販売名が広告可能事項に列挙されていない構造は「美容クリニックのSEO対策|施術名と価格表示の規制から進め方を解説」と共通します。矯正歯科では、限定解除を持ち出す前に広告可能な範囲がある点が固有の構造です。
広告告示第2条第4号の【具体例】に「歯列矯正」が名指しされている
医療広告等ガイドラインは、保険診療と同一の手技である自由診療について、公的医療保険が適用されない旨及び標準的な費用を併記すれば治療の方法として広告できるとし、その【具体例】に歯列矯正を挙げています。一方、同じ歯科でも「審美治療」は「様々な治療の方法が含まれ、そのいずれの治療を提供するのかという点が明確ではなく、誤認を与える可能性があると考えられ、広告できません」とされ、扱いが異なります。
公的医療保険が適用されない旨と標準的な費用を併記すれば広告可能
指針は「ただし、公的医療保険が適用されない旨(例えば、「全額自己負担」、「保険証は使えません」、「自由診療」等)及び標準的な費用を併記する場合に限って広告可能であること。」としています。標準的な費用は「一定の幅(例えば、「5万~5万5千円」等)や「約○円程度」として示すことも差し支えない」とされますが、これは費用の示し方の一例で、矯正治療の実際の相場を示すものではありません。
症例写真や詳しい治療解説を載せるなら限定解除の4要件が必要になる
症例写真や詳しい治療解説を載せる場合に立ちはだかるのは、結局のところ限定解除の4要件です。また指針は、「医薬品医療機器等法の広告規制の趣旨から、医薬品又は医療機器の販売名(販売名が特定可能な場合には、型式番号等を含む。)については、広告しないこととすること。」としており、装置のブランド名を前面に出す設計には法令上の論点があります。
出典:医療広告等ガイドライン|厚生労働省、医療広告等ガイドラインに関するQ&A|厚生労働省
症例写真(ビフォーアフター)は矯正歯科の集患コンテンツの主力――詳細な情報がなければ広告できない

文字だけの解説と違い、症例写真は治療の効果を視覚的に伝えられる強力なコンテンツです。矯正歯科のウェブサイトでは、治療前後の症例写真がそのまま集患コンテンツの主力になります。同時に、症例写真は医療広告等ガイドラインが掲載の条件を細かく定めている領域です。 ここでは、写真に何を足せば広告として掲載できるのかを、事例解説書に沿って具体的に整理していきます。
治療前後の写真だけでは広告として認められない
事例解説書(第6版)は、「ビフォーアフター写真の掲載に必要な情報が十分に記載されておらず治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがあるものについては、広告することはできない。」としています。具体的には「ビフォーアフター写真のみが掲載され、説明が一切ない」ケースが、広告として認められない典型例です。
イラストや術前・術後どちらか一方の写真にも同じ情報が必要
事例解説書は「術前又は術後のイラストや、術前のみ又は術後のみの写真についても通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療の主なリスク・副作用等の情報を付す必要がある。」としています。「写真ではなくイラストだから」「片方の写真しか載せていないから」広告に該当しないという理屈は、この事例解説書のもとでは通用しない考え方です。
クリック後にしか説明が出ない構成もリスクがある
症例一覧のUI設計にも、この規定は影響します。事例解説書は、「画像等をクリックしなければ詳細な説明が表示されない」構成についても広告として認められないおそれがあるとしています。症例一覧をサムネイルのグリッドで並べてクリックで詳細を開く構成や、アコーディオンで説明を畳む構成は、この規定に照らして見直すべき対象です。
出典:医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)|厚生労働省
広告できる矯正の専門医資格は「日本歯科専門医機構認定矯正歯科専門医」だけ――全国302名

冒頭で見た26,194施設という数字は、「矯正歯科の看板を掲げていること」を示すにすぎません。広告できる専門性の裏づけを持つことは、これとは別の話です。 資格表示の線引きという一般論は「士業のSEO対策は広告規制とどう両立する?表現の線引きを解説」に譲り、ここでは矯正歯科固有の資格構造を見ていきます。
歯科医師の基本的な診療領域8つに矯正歯科が含まれる
医療広告等ガイドラインは、「専門医機構が認定するいわゆる専門医等の資格(基本的な診療領域に係るものに限る)を有する旨を広告しても差し支えないこと。」としています。歯科医師の基本的な診療領域について指針は、「歯科医師については、口腔外科、歯周病、歯科麻酔、小児歯科、歯科放射線、補綴歯科、矯正歯科及び歯科保存をいうこと。」と定めており、矯正歯科はこの8領域のひとつです。
厚生労働大臣に届出がなされた団体の認定資格(歯科医師5団体5資格)に矯正の資格は無い
厚生労働大臣に届出がなされた団体の認定資格として、厚生労働省は歯科医師について口腔外科・歯周病・歯科麻酔・小児歯科・歯科放射線の5団体5資格を公表しており、この一覧に矯正の資格は載っていません。同資料は、「厚生労働大臣に届出がなされた団体の認定資格名が広告することができる事項から除かれました。」とも説明しています。
日本歯科専門医機構認定矯正歯科専門医は令和6年9月13日から広告可能に、全国302名
日本歯科専門医機構は、令和6年9月13日付で同機構認定の「矯正歯科専門医」が広告可能になったと公表しました。広告する際の正しい表記は「日本歯科専門医機構認定矯正歯科専門医」のように認定団体名を資格名とともに示す形です。 機構の概報(令和8年3月31日現在)によれば、機構認定の矯正歯科専門医は全国302名。学会員7,397名や学会臨床医394名とは別の区分です。
出典:医療広告等ガイドライン|厚生労働省、医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名(厚生労働大臣に届出がなされた団体の認定するもの)等について|厚生労働省、日本歯科専門医制度概報 令和7年(2025年)度版|一般社団法人 日本歯科専門医機構
保険適用となる歯科矯正は4類型――令和8年6月1日から対象が広がった

「歯列矯正は自由診療」なので保険は使えない、と1行で済ませて説明を終える解説も少なくありません。しかし法令上は、療担規則が原則として保険の対象にできないと定めたうえで、厚生労働大臣が定める例外を設けるという構造です。 ここでは、保険適用の対象になる4類型と、令和8年6月1日から新たに加わった対象を確認していきます。
療担規則第21条第9号「歯科矯正は、療養の給付の対象として行つてはならない」が原則
矯正歯科の保険適用を検討するうえで、まず押さえるべきなのがこの条文です。保険医療機関及び保険医療養担当規則第21条第9号は、「歯科矯正は、療養の給付の対象として行つてはならない。ただし、別に厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。」と定めています。「保険が効かない」ではなく、原則として公的医療保険の給付対象にできないという構造が正確です。
保険診療の対象になる4類型と、令和8年6月1日に追加された「18歳未満・連続3歯以上の先天性欠如歯」
保険診療の対象になる歯科矯正は4類型です。厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常、永久歯萌出不全に起因した咬合異常、顎変形症の手術前後の療養に加え、令和8年6月1日から「18 歳未満の患者であって、連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常」が対象に加わりました。 3類型のまま説明している記事は、この最新の追加を反映できていません。
保険で矯正を行うには施設基準の届出が必要、歯科矯正相談料は届出なしでも算定できる
保険で矯正を行うには、施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関である必要があります。この施設基準の届出は、矯正歯科を診療科名として標榜する届出とは別の制度です。 施設基準の届出をしていない保険医療機関でも算定できる歯科矯正相談料2(420点)は令和6年度改定で新設された区分で、令和8年度改定では説明に用いる標準様式が定められました。
出典:保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号)第二十一条|e-Gov法令API、診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号)別添2 歯科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省、療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等の一部を改正する告示(令和8年厚生労働省告示第68号)|厚生労働省、令和6年度診療報酬改定の概要【歯科】|厚生労働省
Googleのローカル検索評価と医療広告規制がぶつかる場面

検索結果にあるのは、広告枠・マップ枠・自然検索枠という3つの領域です。MEOとSEOの優先順位は「美容室のSEO対策|MEOとの優先順位と薬機法表示の注意点を解説」で扱いました。Googleのローカル検索評価の基準と医療広告等ガイドラインの制約がぶつかるのは、矯正歯科のGoogleビジネスプロフィール運用です。 ここでは、その接点をGoogle公式のヘルプに沿って確認していきます。
ローカル検索は関連性・距離・知名度で決まり、クチコミ数と評価が影響する
ローカル検索の順位を決めるのは、Google公式のヘルプに明記された3要素です。Googleは、「ローカル検索結果は、主に関連性、距離、知名度に基づいて表示されます。」としています。もう一段踏み込んだのがクチコミの扱いです。 Googleは「クチコミ数が多く評価の高いビジネスは、ローカル検索結果のランキングが高くなります。」とも説明しており、評価される要素と医療機関が取れる手段の範囲は一致しません。
ビジネス名にサービス・所在地情報を追加できない
Googleのガイドラインが求めるのは、正確なビジネス名の使用です。ガイドラインは「オンラインでユーザーに見つけてもらうには、正確なビジネス名(店舗、ウェブサイト、ビジネスレターなどで一貫して使用し、顧客に認知されている、実際のビジネスの名称)を使用します。」としています。「◯◯歯科クリニック 矯正歯科」のようにサービス情報や所在地情報を名前へ足す運用は、このガイドラインに反する使い方です。
出典:Google のローカル検索結果のランキングを改善するヒント|Google ビジネス プロフィール ヘルプ、Google に掲載するビジネス情報のガイドライン|Google ビジネス プロフィール ヘルプ
合同会社ワンブリマーケティングについて
合同会社ワンブリマーケティングは、SEO・オウンドメディア運用・生成AI活用支援を専門とする企業です。矯正歯科のように、医療法と医療広告等ガイドライン、さらに診療報酬の改定までが同時に絡み、広告できる範囲の見極めと専門性の示し方を両立させる必要がある事業者を中心に、キーワード設計から記事制作、掲載内容の点検まで一貫して支援しています。 自院に合った進め方を相談したい場合は、お問い合わせからご連絡ください。
矯正歯科のSEO対策についてよくある質問
Q1. 矯正歯科は保険が使えないのですか?
法令上は、療担規則が歯科矯正を原則として療養の給付の対象にできないと定め、厚生労働大臣が定める場合を例外として認める構造です。例外は、厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常、永久歯萌出不全に起因した咬合異常、顎変形症の手術前後の療養、令和8年6月1日から加わった18歳未満・連続3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常の4類型となります。 自院の患者が該当するかは通知本文で確かめてください。
Q2. 「日本歯科専門医機構認定矯正歯科専門医」という表記はホームページに書いてよいですか?
日本歯科専門医機構は、同機構認定の矯正歯科専門医が令和6年9月13日から広告可能になったと公表しています。広告する際は認定団体名を資格名とともに示す形で書き、資格名だけを単独で掲げる書き方は避けてください。 機構の概報によれば、機構認定の矯正歯科専門医は令和8年3月31日現在で全国302名です。該当する資格を持っていない場合、この表記は使えません。
Q3. 歯列矯正の費用はホームページに書いてよいですか?
医療広告等ガイドラインは、保険診療と同一の手技である自由診療について、公的医療保険が適用されない旨と標準的な費用を併記すれば治療の方法として広告できるとし、その具体例に歯列矯正を挙げています。併用が通常想定される他の治療の方法がある場合に求められるのは、それらを含めた総額の目安まで分かりやすく示すことです。 装置代だけを切り出して安く見せる料金表は、この趣旨から外れます。
Q4. 治療前後の症例写真はどこまで載せられますか?
事例解説書(第6版)がビフォーアフター写真の広告を可能とする条件は、治療内容、費用等に関する事項や治療の主なリスク・副作用等の詳細な情報を付すことです。この条件は術前だけ・術後だけの写真にもイラストにも同じようにかかり、クリックしなければ説明が出ない構成も認められないおそれがあります。 症例は枚数より、添付する情報の設計を先に固めてください。
Q5. 「矯正歯科」という診療科名を掲げるのに許可や届出は必要ですか?
矯正歯科は医療法施行令に根拠のある診療科名で、標榜にあたって厚生労働大臣の許可も届出も要りません。一方、保険で矯正を行うために求められるのは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等へ届け出た保険医療機関であることです。 この2つは別の制度で、混同したまま自院サイトに書いている例をよく見かけます。
まとめ:矯正歯科のSEOは広告できる範囲を条文で見極めて進めよう
矯正歯科のSEOは、歯列矯正という治療の方法が限定解除なしで広告できる一方、専門医資格と保険適用には見落としやすい制約があるという構造で判断してください。指針の具体例に載っている歯列矯正は、保険適用外の旨と標準的な費用を併記すれば広告できますが、症例写真や詳しい治療解説を足すなら限定解除の4要件が必要になります。広告できる矯正の専門医資格は日本歯科専門医機構認定矯正歯科専門医の1つで全国302名、保険適用は4類型で令和8年6月1日から対象が広がりました。 まずは自院サイトの各ページを、広告可能事項に該当するか、限定解除の4要件を満たしているかの2軸で棚卸ししてみてください。
矯正歯科の看板を掲げる医院が増えているという話を聞くと、競合が増えて大変だと感じる方も多いはずです。ある歯科医院の支援では、同じ商圏内に矯正歯科を標榜する医院が複数あっても、検索結果での見え方に差があるケースを実際に見てきました。看板の有無よりも、検索結果でどう見えるかの設計が差別化の起点になると考えています。