SEOコンサルに何を任せられるのか、実行代行と何が違うのか、判断に迷っていませんか。SEOコンサルは、Google公式が業務範囲を列挙する一方、契約の型によって報酬と成果の定義が変わる仕事です。本記事では公式ドキュメントと民法の条文から、業務範囲、契約類型、発注前に確認すべき点を整理します。読み終えれば、自社に合った発注の判断軸が持てます。
SEOコンサルとは何をする仕事か

SEOコンサルへの発注でまず気になるのが、具体的に何を任せられるのかという業務範囲です。ホームページ制作会社に頼める範囲は「ホームページ制作会社にSEOはどこまで頼める?守備範囲の線引きを解説」で扱いました。本記事ではGoogle公式が列挙するサービス内容を軸に、依頼に適したタイミングと自社で対応できる範囲までを整理する構成です。
Google公式が挙げる8つのサービス
Googleは公式に「多くの SEO 業者や代理店、コンサルタントでは、ウェブサイトの管理者向けに次のような便利なサービスを提供しています。」としたうえで、サービスを8つ列挙しています。サイトのコンテンツや構成の見直し、ホスティングやリダイレクトなど技術面の助言、コンテンツ開発、オンライン施策の管理、キーワード調査、SEOのトレーニング、特定市場の専門知識、生成AI向けの最適化の8つです。
依頼に最適なタイミングと、小規模なら自分でできる範囲
Googleは「サイトの再構築を検討しているとき(早ければ早いほどよい)、または新しいサイトの開設を計画しているときが、SEO 業者の利用を開始するのに最適なタイミングです。」としています。一方で、小規模なローカルビジネスの経営者については、作業の多くを自分で行える可能性が高いとも述べています。 規模によっては自社対応も現実的な選択肢です。
生成AI向け最適化(AEO・GEO)も公式列挙の対象
Googleは業者の評価観点として「AI 機能(AEO や GEO サービスとも呼ばれる)向けに最適化するためのアドバイスを提供している場合、そのアドバイスは生成 AI 機能向けに最適化するための Google 検索の公式ガイダンスに沿っているか。」という確認項目を挙げています。サービスの列挙の最後に並ぶのも生成AI向けの最適化です。AEOやGEOを名乗るサービスも、この評価軸から外れることはありません。
出典:SEO 業者の利用を検討する|Google 検索セントラル、サードパーティの SEO ツールとアドバイスに関するガイダンス|Google 検索セントラル
コンサルと実行代行は契約の型が違う

「SEOコンサル」とひとくくりに語られがちですが、法律上は請負と(準)委任で契約の型が異なり、報酬の対象や中途解約時の扱いが変わります。どちらの型が優れているかという話ではなく、成果物をどう定義したかによって契約の型が決まるという前提を、まず条文から確認していきましょう。あわせて2020年施行の改正民法で加わった規定にも触れます。
請負は「仕事の完成」に報酬を払う契約
民法第632条は「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と定めています。報酬の対象は「仕事の結果」であり、何を完成とみなすかがこの契約の前提です。検索順位を仕事の完成と定義すると、Googleが順位を保証できないと明言している以上、完成の定義として置きにくい構造です(詳しくは後述します)。
委任・準委任は「事務の処理」を委託する契約
民法第643条は「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」と定めています。SEOの分析・設計・助言は法律行為ではないため、条文の入口は一般に第656条の準委任になります。第656条は「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。」と定めており、委任の規定が事務処理全般に準用されます。
2020年施行の改正民法で「成果完成型」の準委任が明文化された
改正民法第648条の2第1項は「委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。」と定めています。この規定は2020年4月1日に施行された改正民法で新設されたもので、いわゆる成果完成型の準委任です。「準委任だから成果は問えない」という理解は、現行法では正確ではありません。
中途で終わったときの報酬——履行割合と可分な成果
請負では、民法第634条が「請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。」と定め、注文者が受ける利益の割合に応じた報酬を認めています。委任・準委任では第648条第3項が「受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。」とし、成果完成型にも第634条が準用されます(第648条の2第2項)。
出典:民法(明治二十九年法律第八十九号)|e-Gov法令検索、民法の一部を改正する法律について|法務省
「検索順位を保証します」が成立しない構造と、代わりに何を見るか

「上位表示を保証します」という提案を前にして、どこまで信じてよいのか判断に迷う担当者は少なくありません。順位保証への警告そのものは「広告代理店にSEOを任せる前に確認したい、責任の所在と商流」でも扱いました。ここでは要点を繰り返さず、順位を保証できない理由にあたる算出の仕組みと、代わりに何を評価指標へ据えるべきかまで踏み込んだ整理をする構成です。
「一番上に掲載されることは誰にも保証できません」というGoogleの明言
Googleは公式に「Google で一番上に掲載されることは誰にも保証できません。」と明言しています。掲載順位を保証すると主張する業者や、Googleとの特別な関係を強調する業者には注意してください。 変更を行えば必ず1ページ目に表示されると言われた場合も、他の業者を検討したほうがよいとされています。
平均掲載順位は「最上位順位を全クエリで平均」した値
Search Consoleのヘルプは「パフォーマンス レポートに表示される掲載順位値は、検索結果内のプロパティまたはページへのリンクに付与される最上位の掲載順位であり、そのプロパティが表示されるすべてのクエリでの平均です。」と定義しています。あるクエリで2位・4位・6位に表示された場合は最上位の2位を採用し、別のクエリで3位・5位・9位なら3位を採用したうえで、全クエリの平均を取る仕組みです。
成果が出るまでの期間は断定できない——評価タイミングを契約前に決める
成果が出るまでの期間について、Googleの説明は「数時間かかる変更もあれば、数か月かかる変更もあります。一般的には、数週間待ってから Google 検索の検索結果に良い影響があったかどうか確認することをおすすめします。」というものです。「3か月で成果が出ます」といった期間の断定は、この公式見解と矛盾します。 評価のタイミングをいつに設定するかは、契約前に発注側とすり合わせておくべき点です。
出典:SEO 業者の利用を検討する|Google 検索セントラル、表示回数、掲載順位、クリック数とは|Search Console ヘルプ、検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド|Google 検索セントラル
発注前に確認する質問と、権限の渡し方

提案書を前にして、何を確認すれば妥当性を判断できるのか迷う場面は多いはずです。発注前の質問リストはGoogle公式に9項目あり、詳しい確認の仕方は「中小企業のSEO対策は何から始める?優先順位と時間の使い方を解説」でも扱いました。ここでは質問リストの要点だけに絞り、SEOコンサルに固有の論点である権限の渡し方と、サードパーティ製ツールにできることの限界に重心を置きます。
Google公式が挙げる9つの質問(要点)
Googleは「SEO 業者の候補と面談する。SEO 業者に対する効果的な質問の例を以下に示します。」としたうえで、9つの質問を挙げています。過去の実績や成功事例、Google検索の基本事項への準拠、同業種・同地域での実績、創業年数、連絡体制、自社のビジネスへの関心までが対象です。なかでも重視したいのが「期待される結果とその時期、成果はどのように測定するのか。」という質問です。
SEO監査ではSearch Consoleの「読み取り権限のみ」を渡す
Googleは「SEO 業者から SEO 監査の提案を受けた場合は、その内容を慎重に検討し、Search Console への読み取り権限のみを付与してください(この段階では書き込み権限は付与しないでください)。」と明記しています。監査段階でいきなり書き込み権限を渡す必要はありません。 また「隠し立てする会社や、行動の目的を明確に説明しない会社には、用心してください。」とも述べています。
サードパーティ製ツールの限界——Googleは評価も推奨もしていない
Googleは「Google はサードパーティ サービスを評価していないため、そのような主張やほのめかしを行うサービスには注意してください。」と明言しています。サードパーティ ツールは内部ランキングデータへのアクセスもパフォーマンスの保証もできないとされ、代わりに「Google Search Console を使用することを強くおすすめします。」と案内しているのが公式の立場です。
出典:SEO 業者の利用を検討する|Google 検索セントラル、サードパーティの SEO ツールとアドバイスに関するガイダンス|Google 検索セントラル
契約書で決めておくこと

契約類型の違いを踏まえると、契約書で言葉にしておくべき点が具体的に見えてきます。ここで整理するのは、報酬の型、中途解約したときの対価、成果を評価するタイミングという3点です。SEOコンサルの費用相場は公的機関の統計に見当たらないため、本記事では金額を示さず、決め方の軸だけに絞って解説します。 自社の契約書の条項に落とし込む前提で読み進めてください。
報酬は「履行割合」か「成果」か、契約書のどちらで定義されているか
民法第648条第1項は「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。」と定めています。報酬の有無や金額は、契約書の特約でどう定めたかによって決まるということです。 成果に対して報酬を支払う場合は「第六百三十四条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。」(第648条の2第2項)が根拠になります。
中途解約したときの対価をどう決めるか——可分な成果の考え方
民法第634条(請負)と第648条第3項(委任・準委任)が定める考え方は、前章で解説したとおり中途終了時の報酬算定でも共通の基準です。契約書には、この基準をどの作業まで完了とみなすかという具体的な線引きと、算定根拠になる工数表や成果物リストの扱いまで明記しておくことが、解約時の認識のズレを防ぐポイントです。
評価のタイミングと成果の定義をあらかじめ契約書で握る
Googleは「一般的には、数週間待ってから Google 検索の検索結果に良い影響があったかどうか確認することをおすすめします。」としています。また「サイトに加えたすべての変更に関する情報、およびアドバイスの内容に関する詳しい情報とその理由を伝えてくれるかどうか。」も公式の確認項目です。評価のタイミングとレポート内容を、契約前に文書で決めておくことが実務上のポイントです。
出典:民法(明治二十九年法律第八十九号)|e-Gov法令検索、表示回数、掲載順位、クリック数とは|Search Console ヘルプ、SEO 業者の利用を検討する|Google 検索セントラル
トラブルが起きたときの受け皿——BtoB取引は消費者保護法の外側

契約でトラブルが起きたとき、事業者間の取引には個人の消費者と同じ保護が働きません。BtoB取引の法的な立ち位置は「BtoBのSEOとBtoCの違いとは?検索者と決裁者のズレから解説」とも通じるテーマです。ここでは発注側が押さえておくべき3つの制度——消費者保護法の適用範囲、取適法、景品表示法——を、条文に沿って順に整理します。
消費者契約法・特定商取引法はBtoB取引の外側——クーリング・オフは効かない
消費者契約法第2条第1項は「個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。」と消費者を定義しており、事業者としての契約は対象外です。特定商取引法第26条第1項第1号も「購入者若しくは役務の提供を受ける者が営業のために若しくは営業として締結するものに係る販売又は役務の提供」を適用除外とし、クーリング・オフの規定は及びません。
2026年1月施行の取適法——SEOコンサルへの当てはめは取引の形による
下請法は2026年1月1日、正式名称を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(通称:取適法)に改めて施行されました。適用基準の変更点は、「従来の資本金基準に加え、従業員基準(300人、100人)が追加され、規制及び保護の対象が拡充されます」という内容です。SEOコンサルの発注が取適法の役務提供委託に当たるかは、取引の形によります。
「SEO会社No.1」表示の読み解き方——景表法は一般消費者向けの法律
消費者庁は「インターネット検索により、単に検索結果で上位表示された同種商品等を比較対象として選定しているだけで、市場における主要な同種商品等の一部又は全部を比較対象に含めないまま、調査を行っている場合」を問題視しています。ただし景品表示法は「一般消費者の利益を保護することを目的とする。」法律であるため、BtoB向け表示への直接適用は断定できません。
出典:消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)|e-Gov法令検索、特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号)|e-Gov法令検索、取適法|公正取引委員会、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律|e-Gov法令検索、不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)|e-Gov法令検索、No.1 表示に関する実態調査報告書|消費者庁表示対策課
合同会社ワンブリマーケティングについて
合同会社ワンブリマーケティングは、SEO・オウンドメディア運用・生成AI活用支援を専門とする企業です。契約類型や権限の渡し方まで含めて発注前の判断軸を必要とする事業者を中心に、キーワード設計から記事制作、成果測定の設計まで一貫して支援しています。 SEOコンサルの発注を検討している場合は、お問い合わせからご連絡ください。
SEOコンサルについてよくある質問
Q1. SEOコンサルティングとSEO対策代行(実行代行)はどう違いますか?
法律上は契約の型が異なります。請負は民法第632条が「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と定める契約で、報酬は仕事の完成に対して支払われます。 一方、助言や分析が中心のコンサルティングは、法律行為でない事務の委託である準委任(第656条)にあたることが一般的です。
Q2. 「検索順位を保証します」というSEOコンサルは信頼できますか?
慎重に検討すべき提案です。Googleは公式に「Google で一番上に掲載されることは誰にも保証できません。」と明言しており、掲載順位を保証すると主張する業者や、Googleとの特別な関係を強調する業者には注意が必要だとしています。変更を行えば必ず1ページ目に表示されると断言する業者の説明も、この公式見解とは矛盾する内容です。
Q3. SEOコンサルの費用相場はどれくらいですか?
総務省や中小企業庁など公的機関の統計に、SEOコンサルティングの費用相場は確認できませんでした。民間企業が公表する相場情報は出典として使えないため、本記事では金額を示していません。 費用は作業の範囲、体制の規模、契約期間によって変わるため、任せたい業務範囲を先に整理したうえで、複数の業者に見積もりを依頼して比較する進め方をおすすめします。
Q4. SEOコンサルを発注する前に、契約書で確認すべき項目は何ですか?
報酬の型が履行割合か成果完成かを確認してください。民法第648条は特約がなければ報酬を請求できないと定めており、報酬の有無や条件は契約書の記載次第です。 2020年施行の改正民法で新設された第648条の2は、委任事務の履行で得られる成果に対する報酬(成果完成型)も認めており、どちらの型にあたるのかを契約書の文言で確認しておきましょう。
Q5. SEOコンサルの成果は、何の指標で判断すればよいですか?
平均掲載順位だけを見て判断するのは避けてください。Search Consoleの平均掲載順位は、表示された全クエリの最上位順位を平均した値であり、Googleも「掲載順位値が何を意味するかは状況によって変化するため、数字だけを見て判断すべきものではありません。」としています。 表示回数やクリック数、実際の問い合わせ数まで含めて、契約前に決めた評価タイミングで確認する姿勢を持ちましょう。
まとめ:SEOコンサルは契約の型を理解し賢く活用しよう
SEOコンサルは、請負か(準)委任かで報酬と成果の定義が変わる契約であり、検索順位そのものを保証できる仕組みにはなっていません。発注前には、契約類型が履行割合型か成果完成型かを確認し、Search Consoleは監査段階では読み取り権限のみで渡し、BtoB取引は消費者保護法の対象外である点を踏まえて契約書の文言を確認することが欠かせません。 まずは自社の契約書にある報酬条項と解約条項を読み直し、判断に迷う場合は専門家への相談も検討してみてください。
SEOコンサルの業務範囲を尋ねられると、多くの発注担当者はコンテンツ制作だけを想像します。あるBtoB製造業のメディア支援では、記事を1本も増やさないまま、重複していたURLの正規化とリダイレクトの整理だけを行って検索からの流入が戻った局面がありました。見積もりを比べるときは、コンテンツ制作と技術面の助言を分けて業務範囲を捉えることをおすすめします。