SEOを外注したいものの、発注する側に何が課されるのか分からず迷っていませんか。2026年1月施行の取適法と2024年11月施行のフリーランス法により、発注者にも法的な義務が生じます。 本記事で扱うのは、発注者に課される義務、外注が対象外になる条件、外に出す範囲と社内に残す範囲の線引きの3点です。読み終えれば、契約前に確認すべき項目を自社の状況に当てはめて判断できるようになります。
SEOを外注する背景と、発注者側に生じる法的環境の変化

SEOを外注する理由の多くは、社内に専門人材がいないことです。これは感覚的な話ではなく、公的な調査にもはっきり表れています。社内リソースが限られる場合の優先順位づけは「中小企業のSEO対策は何から始める?優先順位と時間の使い方を解説」で取り上げました。本記事では、外に出す判断をした発注者側に何が課されるのか、その義務と範囲の線引きに絞って解説します。
日本企業の「専門人材不足」を示す総務省の調査
総務省の令和8年版情報通信白書に、専門人材不足を示す3つの数字があります。デジタル化の課題は「人材不足(39.4%)」が最大で、UI・UXデザイナーの在籍は23.7%、AI・データ解析の専門家の在籍は26.4%にとどまり、他国より低い水準です。 ただし、従業員10名以上かつデジタル化着手済み企業の管理職以上に尋ねた2026年1〜2月調査(日本n=515)の値で、日本企業全体の数字ではありません。
2026年1月、発注者側の法的環境も変わった
「下請法」は2026年1月1日、正式名称を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、通称「取適法」に改めて施行されました(2026年8月時点)。発注者に課される具体的な義務や、適用される基準については、後段の見出しで詳しく整理します。 用語も「親事業者」から「委託事業者」へ変わっているため、読み替えに注意しましょう。
出典:令和8年版 情報通信白書 第Ⅱ部第1章第11節「デジタル活用の動向」|総務省、取適法|公正取引委員会
外注先の行為の結果は、発注者のサイトに返ってくる

外注先が何をしても、その結果を引き受けるのは発注者です。施策の実行から発注者への影響までは、実行・審査・掲載順位という3ステップでつながっています。 商流が絡む発注ほど責任の所在が曖昧になりやすい点は「広告代理店にSEOを任せる前に確認したい、責任の所在と商流」で扱いました。ここで確認したいのは、Google公式の原文で影響を受ける対象が誰とされているかです。
ポリシー違反の結果を受けるのは「サイト」——外注先ではない
Googleのスパムポリシーにこうあります。「Google のポリシーに違反しているサイトは、検索結果での掲載順位が下がったり、まったく表示されなかったりすることがあります。」この一文の主語は「SEO業者」ではなく「サイト」です。 施策を実行したのが外注先であっても、掲載順位という結果を受け取るのは発注者のドメインになります。
スパムの判断軸は「検索システムを操作する目的」にある
Googleはスパムを「ユーザーを欺いたり、コンテンツを目立つように表示する目的で Google の検索システムを操作したりするために使用される手法」と定義しています。見られるのは使った手法の名前ではなく、検索システムを操作する目的があったかどうかです。 外注先に何をするのかを聞くだけでなく、何のためにやるのかまで確認しておきたいところです。
業者選びの責任は発注者にある、とGoogleは明記している
Googleは「SEO 業者が人を欺くようなコンテンツをユーザーの代わりに作成した場合は、そのユーザーのサイトが Google インデックスから完全に削除される可能性があります。」としています。「結局、どの業者を選ぶかはユーザーの責任になります」 という一文も添え、業者が契約者をどのように支援するつもりなのかを正確に把握しておくよう促す内容です。選定の責任は発注者側にある、というのが公式の立場です。
出典:Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー|Google 検索セントラル、SEO 業者の利用を検討する|Google 検索セントラル
「下請法」は2026年1月に「取適法」へ変わった——発注者に課される4つの義務

2026年1月1日に施行された取適法(旧・下請法)では、発注者にあたる委託事業者に課される義務が4つに整理されています(2026年8月時点)。条番号は旧法から動いており、旧下請法の「3条書面」は現行の取適法では第4条(明示等)です。 旧用語のまま社内マニュアルを運用していると、条番号の読み替えを誤ります。
発注者に課される「4つの義務」
公正取引委員会は「委託事業者には、4つの義務と11の遵守事項が課されています」としています。義務は①発注内容等を書面または電磁的方法で明示する義務②取引の記録を作成し2年間保存する義務③受領日から起算して60日の期間内、かつできる限り短い期間内に支払期日を定める義務④遅延利息(年率14.6%)を支払う義務の4つです。 支払期日は検査の有無にかかわらず受領日が起点になります。
資本金・従業員基準は取引の種類で2系統ある
取適法の適用基準は、資本金と従業員数で2系統に分かれます。情報成果物作成委託・役務提供委託のうちプログラム作成・運送・保管・情報処理に係るものは資本金3億円超または従業員300人超、それ以外は資本金5,000万円超または従業員100人超が委託事業者の基準です。 SEOの記事制作や図解制作は、多くの場合後者に当たります。「資本金1,000万円超なら対象」という単純化は現行法で成り立ちません。
出典:取適法|公正取引委員会、2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(取適法リーフレットNo.01)|公正取引委員会
自社サイトのSEO発注は「役務提供委託」の対象外になり得る——ただしフリーランス法は別

自社サイトのためにSEOを外注する場合、取適法の対象になるかどうかは条文の定義に照らして確認する必要があります。発注者が自ら用いる役務の委託を前提にすると、適用関係の整理は3段階です。 契約類型(請負・準委任)の基礎解説は「SEOコンサルとは?契約の型と発注前に確認すべきことを解説」に譲り、ここでは取適法とフリーランス法という2つの法律の適用範囲の違いに絞ります。
取適法の「役務提供委託」は自ら用いる役務を対象外とする
取適法は「この法律で『役務提供委託』とは、事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」と定めています。「業として行う提供」という限定があり、発注者が自ら用いる役務の委託はこの定義の外です。 公正取引委員会のパンフレットも、自ら用いる役務の委託は役務提供委託の対象外だと明記しており、この限定を落とすと記事の前提が崩れます。
フリーランス法は「自らに役務の提供をさせること」を含む
フリーランス法は「業務委託」を定義する際、役務の提供委託について「他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。」と括弧書きを置いています。この括弧書きが取適法との決定的な違いです。 公正取引委員会のパンフレットも、発注事業者が自ら用いる役務の提供をフリーランスに委託することは対象になると明記し、「本法の適用対象には、業種・業界の限定はありません。」ともしています。
記事や図解などの制作物は「情報成果物作成委託」に当たり得る
記事・図解・サイトの制作を外注する場合に関わってくるのが「情報成果物作成委託」という枠です。取適法は情報成果物の一つに「文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの」を挙げており、記事や図解はこの号に読めます。ただし該当するかは取引の形によって変わるため、個別に確認しましょう。 役務提供委託とは別の枠であることに注意してください。
出典:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律|e-Gov法令検索、フリーランス・事業者間取引適正化等法 ここからはじめる(パンフレット)|公正取引委員会
「資本金基準がない」フリーランス法は、支払期日・再委託・中途解除にも及ぶ

フリーランス法(2024年11月1日施行)は資本金の要件を持たず、発注者が誰にあたるかと委託期間の長さによって、義務が3段階で広がる仕組みです。 支払期日の話題から、費用の内訳や見積もりの読み方は「SEO対策の費用は何に払うのか?相場の出どころと見積もりの見方を解説」で扱っています。ここで追うのは、義務がどう広がるかという一点です。
取引条件の明示義務はフリーランス同士の取引にもかかる
公正取引委員会のパンフレットにあるのは「取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象であるため、発注事業者がフリーランスである場合にも義務が課されます。」という説明です。「電話など口頭で伝えることは認められません」と明記されており、口頭だけの発注では明示義務を果たせません。 「電磁的方法とは、電子メール、SNSのメッセージ、チャットツールなどです。」とされ、チャットでの明示は認められます。
支払期日は60日以内のできる限り短い期間内、再委託には特有のルールがある
支払期日は、特定業務委託事業者が給付を受領した日から起算して60日の期間内、かつできる限り短い期間内に定めるルールです。再委託なら、①再委託である旨②元委託者名③元委託業務の対価の支払期日を明示すれば、元委託支払期日から30日以内にできます。 ただし「元委託者から発注事業者への報酬の支払が、元委託支払期日より遅れたとしても、フリーランスへの報酬の支払を遅らせることはできません。」という条件付きです。
6か月以上の契約は中途解除の30日前までに予告が必要
公正取引委員会の説明は「発注事業者は、①6か月以上の期間で行う業務委託について、②契約の解除または不更新をしようとする場合、③例外事由に該当する場合を除いて、解除日または契約満了日から30日前までにその旨を予告しなければなりません。」という記述です。SEOの記事制作は月次で続きやすく、6か月以上の契約は珍しくありません。 「今月で終わりにします」という運用が、この義務に触れる可能性があります。
出典:フリーランス・事業者間取引適正化等法 ここからはじめる(パンフレット)|公正取引委員会、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律|e-Gov法令検索
何を外に出し、何を社内に残すか——権限の渡し方と「連絡したらアウト」の誤解

外注先に何を渡し、何を自社に残すかは、権限の話と業務の実態管理の話に分けて考える必要があります。Google公式と厚生労働省の資料から、実務で効く3つのポイントを取り出します。 外注先の種類ごとの守備範囲は「ホームページ制作会社にSEOはどこまで頼める?守備範囲の線引きを解説」で扱いました。ここで扱うのは、権限の渡し方と偽装請負をめぐる誤解です。
SEO監査の段階ではSearch Consoleの「読み取り権限のみ」を渡す
Googleは「SEO 業者から SEO 監査の提案を受けた場合は、その内容を慎重に検討し、Search Console への読み取り権限のみを付与してください(この段階では書き込み権限は付与しないでください)。」と明記しています。監査段階でいきなり書き込み権限を渡す必要はありません。 渡す権限は、作業に必要になった範囲だけを後から開けていけば十分です。
アクセス権を渡すなら、変更内容の説明とセットにする
FTPサーバーへのアクセスを渡す場合について、Googleは「ユーザーのサイトに加えたすべての変更について、進んで説明するべきです。」としています。権限を渡すなら、何をどう変えたのかを共有してもらう取り決めを先に交わしておきます。 変更の履歴が発注者側に残らない状態は、契約を切り替えるときの引き継ぎで詰まる原因です。
判断できる知識は社内に残しておく
「最終的に SEO 業者を利用することになった場合でも、SEO の手法について知っておくことで、SEO 業者が非推奨の手法や禁止されている手法を使おうとしているかどうかを識別できるようになります。」というのもGoogle自身の記述です。外注しても、外注先の手法が妥当かどうかを見極める目までは外に出せません。 権限を段階的に開けていく判断も、社内に最低限の知識がなければ下せない、というのが公式の前提です。
同席やccメールだけでは偽装請負にならない
厚生労働省の疑義応答集にあるのは「発注者・請負事業主間の打ち合わせ等に、請負事業主の管理責任者だけでなく、管理責任者自身の判断で請負労働者が同席しても、それのみをもって直ちに労働者派遣事業と判断されることはありません。」という整理です。依頼メールのccも同様に、それだけで直ちに労働者派遣事業とは判断されません。 ただし作業の順序や割振りの詳細な指示、日常的な方針変更、直接返信の要求があれば別です。
事前面談・職務経歴書の要求、通常予定業務以外の依頼には注意が必要
厚生労働省の疑義応答集にあるのは「発注者が請負労働者の職務経歴書を求めたり事前面談を行ったりする場合は、一般的には当該行為が請負労働者の配置決定に影響を与えるので、労働者派遣事業又は労働者供給事業と判断されることがあります。」という記載です。仕様書や指示書の交付が「通常『注文者』が行う程度の指示にとどまる場合」は、指揮監督関係を肯定する要素になりません。 契約書の名前ではなく、実態で判断されます。
出典:SEO 業者の利用を検討する|Google 検索セントラル、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集(第2集)|厚生労働省、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン|公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省
外注先のコンテンツとリンクにも、発注者が把握しておくべきリスクがある

外注先の担当範囲を決めた後も、コンテンツと被リンクの扱いには発注者が把握しておくべき点が残ります。Google公式の原文から、問題にならない例と問題になり得る例を分けて整理します。 外注できる具体的なタスクの一例として、リライトの手順は「SEOのリライトとは?Google公式の見解をもとに手順と反映時期を解説」で扱いました。
外注ライターのコンテンツ自体はGoogleのポリシー違反ではない
Googleが示しているのは「サードパーティのコンテンツを使用しているというだけでは、サイトの評判の不正使用に関するポリシーに違反したことにはなりません。」という線引きです。フリーランサーが作成したコンテンツもサードパーティコンテンツに含まれますが、それだけでは違反になりません。 違反は「すでに確立されたホストサイトのランキング シグナルを利用することを主な目的として」公開されている場合だけです。
「月100本納品」型の大量生成と被リンクの扱いに注意する
Googleは大量生成コンテンツの不正使用の例として「生成 AI ツールまたはその他の同様のツールを使用して、ユーザーにとっての価値を付加することなく大量のページを生成すること」を挙げています。「生成AIを使うと違反」ではなく、価値を付加しない量産が条件です。 納品本数そのものを評価軸に置いた発注は、この条件に近づきやすくなります。
被リンクの売買は属性の設定で扱いが変わる
広告やスポンサー活動を目的とするリンクの売買は「rel=”nofollow” 属性や rel=”sponsored” 属性を タグに設定している限り、Google ポリシーに対する違反にはなりません。」というのがGoogleの説明です。裏を返せば、属性を付けずランキング操作を狙った売買はこの範囲から外れます。 外注先が被リンクに関わる場合は、属性をどう設定するのかまで契約時に確認しておきます。
出典:Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー|Google 検索セントラル
合同会社ワンブリマーケティングについて
合同会社ワンブリマーケティングは、SEO・オウンドメディア運用・生成AI活用支援を専門とする企業です。契約前に確認すべき法令上の義務や、外に出す範囲と社内に残す範囲の整理まで含めて、発注前の判断軸を必要とする事業者を中心に支援しています。 SEO外注を検討している場合は、お問い合わせからご連絡ください。
SEOの外注についてよくある質問
Q1. SEO外注とSEOコンサルの違いは何ですか?
契約類型(請負・準委任)の解説は「SEOコンサルとは?契約の型と発注前に確認すべきことを解説」に譲ります。本記事は、外注したときに発注者側に生じる取適法・フリーランス法上の義務に焦点を当てている点が異なります。 呼び方の差ではなく、見ている論点そのものが違うと捉えてください。契約の型を決める話と、発注者にかかる義務を確認する話は、発注前に両方とも必要になる別々の作業です。
Q2. SEO外注は取適法(旧・下請法)やフリーランス法の対象になりますか?
自社サイトのためのSEO外注は、取適法の役務提供委託としては対象外になり得ますが、フリーランス法は自ら用いる役務の提供の委託も対象に含みます。 記事や図解などの制作物は情報成果物作成委託に当たり得るため、どちらが適用されるかは取引の形によります。取適法の対象外だとしても規制が消えるわけではなく、かかる法律が入れ替わるだけです。該当するかは個別に確認しましょう。
Q3. 何を外注し、何を自社に残すべきですか?
Googleは「Search Console への読み取り権限のみを付与してください」とSEO監査の場面で案内しています。監査段階で渡す権限は読み取りのみ。あとは必要になった範囲だけを段階的に開けていく進め方です。 Googleは「小規模なローカル ビジネスの経営者は、おそらく、作業の多くを自分で行う」側に立てるとも書いており、すべてを外に出す前提を置いていません。
Q4. SEO外注の費用相場はどれくらいですか?
公的統計にSEO外注の費用相場は見当たらないため、本記事では金額を示していません。詳しい相場の出どころと見積もりの見方は「SEO対策の費用は何に払うのか?相場の出どころと見積もりの見方を解説」で解説しています。 任せたい業務範囲を先に整理したうえで、見積もりを比較する進め方が確実です。金額だけを横に並べても、何に対して払うのかが揃っていなければ比較になりません。
Q5. SEO外注でよくある失敗は何ですか?
失敗率などの統計は存在しないため、本記事では扱いません。実務でつまずきやすいのは、業務の遂行方法まで発注者が細かく指示してしまうケースや、事前面談・職務経歴書の要求を条件にしてしまうケースです。 厚生労働省の疑義応答集は、事前面談などを「労働者派遣事業又は労働者供給事業と判断されることがあります」としています。大切なのは、通常の注文者が行う程度の指示にとどめる意識です。
まとめ:発注者の義務を理解し、賢くSEO外注を活用しよう
SEO外注で発注者に生じるのは、取適法・フリーランス法上の義務と、外に出す範囲をどこで切るかという判断です。2026年1月施行の取適法は自社利用の役務を役務提供委託の対象外とする一方、フリーランス法は資本金要件なしで対象になり得ます。 SEO監査ではSearch Consoleの読み取り権限のみを渡し、同席やccメールだけで直ちに労働者派遣事業と判断されることはありません。まずは自社の外注先の契約内容・資本金・従業員数、外注先が個人か法人かを確認し、必要であれば契約書の文言を見直すことから始めてみてください。
社内に専門人材がいないから外注する、という判断は自然な流れです。あるBtoB製造業のオウンドメディア支援では、社内にSEO担当者が誰もいない状態で外注を始めた結果、契約内容の確認や進捗管理まで外注先任せになっていた局面がありました。外注する業務の範囲だけでなく、発注者として自社に残す確認業務まで先に決めておくことをおすすめします。