OTAへの手数料負担を感じながら、公式サイトのSEOに本気で取り組めていない宿泊事業者は少なくありません。ホテルのSEOには、旅館業法の営業区分や公正取引委員会のOTA確約計画など、一般的な解説記事が触れない一次情報があります。本記事では法的区分からGoogleの宿泊施設向け仕様までを一次ソースで整理しました。読み終えれば、自社の施策を根拠つきで判断できるようになります。
ホテルのSEO対策になぜ本気で取り組む価値があるのか——3つの統計で確認する

ホテルのSEO対策を検討する前に、まず市場の実態を公的統計で押さえておきましょう。旅館業の許可施設数、延べ宿泊者数と客室稼働率、訪日外客数という3つの統計を確認すると、自社施設の位置づけを客観的に判断しやすくなります。 ここでは調査対象期間と速報・確定の別を明記しながら、それぞれの数値を丁寧に整理していきます。
旅館業の許可施設は93,475施設、うち旅館・ホテル営業は51,038施設(令和6年3月末現在)
厚生労働省の集計によると、令和6年3月末現在の旅館業の営業許可施設数は93,475施設で、前年度から2,725施設増加しました。このうち「旅館・ホテル営業」は51,038施設、簡易宿所は41,909施設です。 厚生労働省が公表している最新の値であり、より新しい年度の数値は同ページにまだ反映されていません(2026年8月10日確認)。
- 「令和6年3月末現在の旅館業の営業許可施設数は、9万3,475施設であり、前年度より2,725施設の増加となっている。」
- 「うち、旅館・ホテル営業数は5万1,038施設、簡易宿所数は4万1,909施設となっている。(衛生行政報告例より)」
2025年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊、客室稼働率は61.6%(確定値)
観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年(1〜12月)確定値によると、延べ宿泊者数は全体で6億6,111万人泊、前年比+0.3%でした。客室稼働率は全体で61.6%で、ビジネスホテルは75.3%、シティホテルは74.1%と高い水準です。 同じ調査には速報値も存在するため、記事では必ず確定値であることを明記します。
- 「延べ宿泊者数(全体)は6億6,111万人泊、前年比+0.3% (2019年比+10.9%)であった。」
- 「客室稼働率は全体で61.6%であり、施設タイプ別では、旅館(38.2%)、リゾートホテル(56.9%)、ビジネスホテル(75.3%)、シティホテル(74.1%)、簡易宿所(29.6%)であった。」
訪日外客数は2025年で4,268万3,837人——予約経路別のデータは公的統計に存在しない
日本政府観光局(JNTO)が公開する時系列推移表によると、2025年の訪日外客数は年計で42,683,837人、前年比15.8%増でした(2026年7月15日更新の値・2026年8月10日確認)。一方、OTA経由と公式サイト経由の予約比率を示す公的なデータは、観光庁・JNTO・厚生労働省のいずれにも見当たりません。 比率の数字を根拠に施策を語る記事を見かけたら、まず出典を確認する姿勢を持ちましょう。
出典:旅館業の概要|厚生労働省、宿泊旅行統計調査(令和7年1~12月期・確定値)|観光庁、統計データ(訪日外客数)|日本政府観光局(JNTO)
「ホテル営業」「旅館営業」は過去の呼び方——2018年に「旅館・ホテル営業」へ一本化された

ホテルのSEO対策を担当するのは、経営者本人だけでなく、マーケティング担当者や外部の代理店であることも珍しくありません。BtoBのSEOとBtoCの違いとは?検索者と決裁者のズレから解説で扱った検索者と決裁者のズレは、こうした宿泊業のSEO相談にもそのまま当てはまります。まずは施策の前提となる、旅館業法上の営業種別の正しい呼び方を確認しましょう。
旅館業法上「旅館・ホテル営業」は施設を設けて宿泊料を受け宿泊させる営業と定義される
旅館業法第二条第2項は、宿泊業の営業区分を「旅館・ホテル営業」という一つの名称で定義しています。簡易宿所営業・下宿営業とは別の区分であり、条文上「ホテル営業」という独立した営業種別は存在しません。 自社サイトの表記を見直す際は、まずこの定義から確認しておきましょう。競合サイトの表記もあわせて見ておくと、自社の立ち位置を客観的に把握できます。
- 「この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。」
2018年6月15日に「ホテル営業」「旅館営業」の区分が統合された——現行法に両者は存在しない
厚生労働省の資料によると、旅館業法の一部を改正する法律は2018年(平成30年)6月15日に施行されました。この改正で「ホテル営業」と「旅館営業」という2つの営業種別は、「旅館・ホテル営業」へ統合されています。 現行法では、「ホテル営業の許可」という表記自体が誤りです。自社サイトや外部メディアの記事に旧い営業種別の表記が残っていないか、この機会に確認しておくべきです。
- 「ホテル営業及び旅館営業の営業種別を統合し、旅館・ホテル営業とする。」
都道府県知事等の許可が必要——無許可営業の罰金上限も引き上げられた
旅館業法第三条第1項は、旅館業を営もうとする者に都道府県知事等の許可を義務づけています。同時に2018年の改正では、無許可営業者に対する罰金の上限額が3万円から100万円へ引き上げられました。 呼称の統一だけでなく、罰則の強化もセットで進んだ改正だと理解しておきましょう。無許可のまま営業を続けるリスクは、改正前より明確に重くなっています。
- 「旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。第四項を除き、以下同じ。)の許可を受けなければならない。」
- 「無許可営業者等に対する罰金の上限額を3万円から100万円に、その他旅館業法に違反した者に対する罰金の上限額を2万円から50万円に引き上げる。」
出典:旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)|e-Gov法令検索、旅館業法の一部を改正する法律の概要|厚生労働省、旅館業法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成三十年政令第二十号)|厚生労働省
直接予約を増やす定番施策が、公正取引委員会の3つの確約計画に触れている

直接予約を増やす施策として、自社サイトの料金をOTAと同等以上に見せる工夫は定番の一つです。ECサイトのSEO対策は何が違う?自社ECとモール出店の構造から解説で扱った自社ECとモール出店の関係は、自社ホテルサイトとOTAの関係にもそのまま重なります。ただしこの領域には、公正取引委員会が扱った3つの確約計画という一次情報があります。
楽天・Booking.com・Expediaは「確約計画の認定」——独禁法違反の認定ではない
公正取引委員会は、楽天(2019年10月25日)、Booking.com(2022年3月16日)、Expedia(2022年6月2日)のレートパリティ条項について、それぞれ確約計画を認定しました。ただし3件とも「確約計画の認定」であり、独占禁止法違反そのものを認定したものではありません。 「OTAが違法認定された」と説明する記事を見かけたら、この違いをまず疑いましょう。
- 「なお,本認定は,楽天の当該行為が独占禁止法の規定に違反することを認定したものではない。」
同等性条件には「ワイド型」と「ナロー型」があり、Expedia事案はナロー型を確約手続の対象外とした
同等性条件(レートパリティ)には、自社サイトとの同等性のみを求める「ナロー型」と、全ての販売経路との同等性を求める「ワイド型」があります。Expedia事案では、ナロー型の同等性条件が宿泊施設側で必ずしも遵守されていない現状を理由に、確約手続の対象から外されました。 つまり「公式サイトを最安値にできるようになった」とまでは言い切れません。
- 「いわゆる同等性条件には,同等性を求める対象が,自社ウェブサイト等の販売経路で提示される宿泊料金等に限定されるナロー型のものと,そのような限定なく,全ての販売経路で提示される宿泊料金等との同等性を求めるワイド型のものがある。」
- 「公正取引委員会は、エクスペディアが宿泊施設運営業者との間で締結し、又は同社の企業グループに属する事業者をして締結させる契約において定めている宿泊料金のナロー同等性条件について、当該宿泊施設運営業者によって必ずしも遵守されていない現状から、確約手続による処理の対象としなかった。」
2025年5月、ホテル運営15社が客室稼働率・料金情報の交換で警告を受けた
公正取引委員会は2025年5月8日、ホテルの運営事業者15社に対し、独占禁止法上の警告を出しています。警告の対象は、客室稼働率や客室単価、将来の予約状況など、競合ホテル間での情報交換でした。 競合調査を進めるときは、OTA掲載価格のような公開情報の観測にとどめるのが安全な範囲です。同業他社との情報のやり取りは、それが集客目的であっても慎重に扱う必要があります。
- 「15社がそれぞれ運営する別表の「対象ホテル」欄記載の各ホテルは、相互に、毎月の客室稼働率、客室平均単価、販売可能な客室1室当たりの収益、将来の予約状況、将来の客室単価の設定方針等の情報を交換していた。」
出典:(令和元年10月25日)楽天株式会社から申請があった確約計画の認定について|公正取引委員会、(令和4年3月16日)Booking.com B.V.から申請があった確約計画の認定等について|公正取引委員会、(令和4年6月2日)エクスペディア・ロッジング・パートナー・サービシーズ・サールから申請があった確約計画の認定等について|公正取引委員会、(令和7年5月8日)ホテルの運営事業者に対する警告等について|公正取引委員会
「公式サイト最安値」表示と口コミ施策——景品表示法とステマ規制

公式サイトへの直接予約を増やす施策では、「最安値保証」のような価格表示や、口コミ・SNSでの発信も定番です。美容クリニックのSEO対策|施術名と価格表示の規制から進め方を解説で扱った価格表示規制の考え方は、宿泊業の料金表示にもそのまま当てはまります。ここでは景品表示法とステルスマーケティング規制の観点から整理します。
「最安値」表示は景品表示法の有利誤認表示(第5条第2号)に照らして設計する
景品表示法第5条第2号は、実際よりも著しく有利だと誤認させる価格表示を「有利誤認表示」として禁じる条文です。「公式サイト最安値」のような表示は、この条文に照らして設計する必要があります。 条文の対象は価格だけでなく取引条件全般に及ぶ点も見落とせません。表示を作成する担当者だけでなく、確認する側にもこの条文の理解が求められる場面です。
- 「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」
二重価格表示は比較対照価格が事実に基づいていることが前提
消費者庁のガイドラインが前提とするのは、比較対照価格を用いた二重価格表示が事実に基づいて行われていることです。限定条件を明示せずに「他店より安い」といった有利性だけを強調する表示も、不当表示に該当するおそれがあります。 ベストレート保証を掲げる場合も、この考え方に沿った運用が問われるため、事前のチェック体制が欠かせません。
- 「これらの比較対照価格については、事実に基づいて表示する必要があり、比較対照価格に用いる価格が虚偽のものである場合には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある。」
- 「限定条件を明示せず、価格の有利性を殊更強調する表示を行うことは、一般消費者に自己の販売価格が競争事業者のものよりも著しく有利であるとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある。」
口コミ・SNS施策はステマ規制の対象——事業者が表示内容を決定していれば該当し得る
令和5年10月1日から、ステルスマーケティングは景品表示法違反という扱いです。事業者が第三者に自社のSNSや口コミサイトへの投稿を依頼し、表示内容を決定していれば、規制の対象になり得ます。 一方でインフルエンサー等の第三者側は、この規制の対象には含まれません。投稿を依頼する側の運用ルールを、社内で整理しておくべきです。
- 「事業者が第三者に対して当該第三者のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合。」
- 「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」
- 「企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません。」
出典:不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)|e-Gov法令検索、不当な価格表示についての景品表示法上の考え方|消費者庁、ステルスマーケティングに関する景品表示法上の考え方|消費者庁
Googleの宿泊施設向け仕様——構造化データより先に知っておくべきこと

構造化データの実装から着手しようとするホテルのSEO担当者は少なくありません。しかしGoogleが公開する構造化データ機能の一覧を確認すると、ホテル専用のリッチリザルトはそもそも存在しません。 実装を検討する前に、Googleがホテルの情報をどの経路で表示しているかを整理しておきましょう。構造化データそのものは無駄になりませんが、着手の優先順位を取り違えると成果につながりにくい分野です。
Google検索がサポートする構造化データにホテル専用のリッチリザルトは存在しない
Googleが公開している構造化データ機能の一覧には、記事・パンくずリスト・商品・レシピなど多数の項目が並んでいますが、「ホテル」「宿泊施設」に該当する項目は2026年8月10日時点で掲載されていません。 Hotelスキーマを実装すればリッチリザルトが出るという説明には、確認できる一次ソースがありません。
ホテルの料金・空室をGoogle検索に出す経路は「Hotel Center」の無料の予約リンク
ホテルの料金や空室情報をGoogle検索に表示させる仕組みは、構造化データではなく「Hotel Center」の無料の予約リンクです。新規・既存を問わず費用はかからず、消費者の好みやランディングページでの操作といった要因でランキングが決まります。 提携関係や課金でリンクの順位を買うことはできません。この経路を知らないまま構造化データだけに投資するのは、機会損失です。
- 「旅行者が Google でホテルを検索する際に、ホテル予約モジュールにホテル広告と一緒に表示されるリンクです。新規のホテル パートナーも既存のホテル パートナーも無料の予約リンクを利用でき、費用はかかりません。」
- 「こうしたシグナルには、消費者の好み、ユーザーに提示される価値、ランディング ページでの操作、過去に Google に提供された料金の精度(料金の精度に関するポリシーに沿って測定)などがあります。無料の予約リンクのプロバイダと Google の提携関係がランキングに影響することはありません。また、金銭により上位のランキングを獲得することもできません。」
Googleビジネスプロフィールの宿泊料金セルフ入力は2025年7月30日で終了——予約URLにOTAは使えない
Google公式ヘルプには2026年8月10日時点で、宿泊料金のセルフ入力機能について「まもなく終了します」との記載があり、2025年7月30日以降は新パートナーとの提携が必要だと案内されています。予約ページのURLにOTAリンクは使えないと明記されている点も見落とせません。 現在の運用状況までの断定は困難です。
- 「宿泊料金のセルフサービス入力機能はまもなく終了します。2025 年 7 月 30 日より、Google ビジネス プロフィールに宿泊料金を表示するには、新しいパートナーとの提携が必要になります。」
- 「予約ページの URL を入力するときは、Facebook などのソーシャル メディア ページや、Expedia や Booking.com などのオンライン旅行代理店(OTA)のリンクは使用しないでください。予約ページの URL は、無料の予約リンクからホテルをクリックしたユーザーを、サードパーティではなくホテルのウェブサイトで直接予約できるように誘導するためのものです。」
出典:構造化データ機能の一覧|Google 検索セントラル、無料の予約リンク|Hotel Centerヘルプ、ホテルの無料の予約リンクについて|Hotel Centerヘルプ、Google ビジネス プロフィールに料金と空室状況を追加して管理する方法|Hotel Centerヘルプ
OTAの施設説明文をそのまま使う運用と、Googleのスクレイピングポリシー

客室の説明文をOTA掲載時のまま自社サイトにも流用する運用は、宿泊業では珍しくありません。Googleのスパムポリシーには、他サイトのコンテンツをそのまま転載する行為に関する規定があり、条件によっては該当し得るという内容です。 ここでは現行の見出し名と、実務上の書き分けの論点を整理します。転載そのものが即座に問題視されるわけではなく、条件の見極めが問われます。
日本語版スパムポリシーの現行の見出しは「スクレイピング」——旧称ではない
Googleの日本語版スパムポリシーにおける現行の見出しは「スクレイピング」です。「無断で複製されたコンテンツ」という見出しは2026年8月10日時点の日本語版には存在せず、旧版の名称にあたります。 元のソースを引用せず、独自のコンテンツや価値を加えずに転載する行為が、この方針の代表例です。見出し名だけでなく、方針の実質的な内容まで確認しておくと誤解を防げます。
- 「スクレイピングとは、他のサイトのコンテンツを、多くの場合は自動化された方法で収集し、それを検索ランキングを操作する目的でホストする行為を指します。」
- 「他のサイトのコンテンツを、元のソースを引用もせず、独自のコンテンツや価値を加えずに転載する」
客室説明はOTA掲載文の転載ではなく、宿泊者の疑問に答える情報を自社サイト側に足す
スパムポリシーの原文は、OTA掲載文の転載をペナルティの対象として名指ししているわけではありません。駐車場の可否、チェックイン時間の融通、アメニティの詳細など、OTA側の定型文にない情報を自社サイトに加える編集方針が現実的な対応です。 ランキング操作を目的とした無価値な転載でなければ、過度に恐れる必要はありません。
OTA掲載文と自社サイトの説明文をどう書き分けるか
OTA掲載文と自社サイトの説明文を実際にどう書き分けるかは、公的な一次ソースが存在しない実務上の論点です。一つの考え方として、OTA側は検索・比較のための簡潔な情報にとどめ、自社サイト側は写真の点数や周辺環境、直前の問い合わせ対応など予約直前に必要な情報を厚くする、という役割分担が考えられます。 断定できる根拠のある領域ではないため、自社の運用に合わせて検討してください。
民泊・簡易宿所の集客はホテルと何が違うのか——住宅宿泊事業法の制約

民泊や簡易宿所の運営は、個人や小規模事業者が担っているケースも多い分野です。中小企業のSEO対策は何から始める?優先順位と時間の使い方を解説で扱った優先順位づけの考え方は、こうした小規模事業者にもそのまま当てはまります。ここでは住宅宿泊事業法が定める制約を確認しましょう。 法令の理解が不十分なまま集客を進めると、思わぬ制約に直面しかねません。
住宅宿泊事業(民泊)は年間180日を超えると成立しない——「180日ルール」は通称
住宅宿泊事業法第二条第3項は、人を宿泊させる日数が「一年間で百八十日を超えないもの」であることを住宅宿泊事業の定義要件としています。いわゆる「180日ルール」という通称は法文には存在せず、これは条文が定める定義そのものです。 集客施策より先に、稼働日数の管理が事業成立の前提になります。曖昧な理解のまま運営を続けると、意図せず法令違反に触れるおそれがあります。
- 「この法律において「住宅宿泊事業」とは、旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)第三条の二第一項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないものをいう。」
届出住宅は42,070件(令和8年7月15日時点)——届出件数と届出住宅数は別の数字
観光庁によると、令和8年7月15日時点の住宅宿泊事業の届出住宅数は42,070件で、令和8年5月から1,325件増加した状況です。届出件数65,837件から事業廃止件数を除いたものが届出住宅数にあたり、この2つの数字を混同すると規模を2万件以上見誤ります。 記事や資料で数字を扱うときは、どちらの数字かを必ず確認しましょう。
- 「なお、届出件数のうち、事業廃止件数は23,767件で、7月15日時点における届出住宅数は令和8年5月よりも1,325件増加し、42,070件となっている。」
自社ウェブサイトへの届出番号掲示は「推奨」であって義務ではない
住宅宿泊事業法施行要領は、ウェブサイトを作成している場合の標識掲示について「推奨される」という表現を用いています。義務づける記載は確認できず、届出住宅における現物の標識掲示とは扱いが異なる点です。 一方で180日を超えて宿泊させ、旅館業法の許可も取得していない場合は、超過分が旅館業法違反にあたります。自社サイトへの掲示を後回しにしている事業者は、この機会に対応を検討する価値があります。
- 「標識については、ウェブサイトを作成している場合は、届出住宅における掲示に加え、当該ウェブサイト上での掲示が推奨される。」
- 「住宅宿泊事業者として届出をした者が、1年間に180 日を超えて人を宿泊させ、旅館業法の許可も取得していない場合は、超過した宿泊分については旅館業法第3条第1項に違反することとなる。」
出典:住宅宿泊事業法(平成二十九年法律第六十五号)|e-Gov法令検索、住宅宿泊事業法の施行状況について|観光庁、住宅宿泊事業法施行要領|観光庁ほか
自社サイトで他社の宿泊・ツアーも紹介したい場合の旅行業法

提携する近隣施設のプランを自社サイトでまとめて紹介したい、という相談は宿泊業でも起こり得ます。この論点には旅行業法が関わりますが、条文の書きぶりを正しく理解しておく必要があります。 ここでは断定を避けつつ、条文上の整理と相談窓口を紹介する構成です。自社サイトに掲載する情報の範囲を誤ると、意図せず規制の対象になりかねない論点です。
旅行業は「報酬を得て」「旅行に関する計画」等を行う事業と定義される
旅行業法第二条第1項は、旅行業を「報酬を得て」特定の行為を行う事業と定義し、複数の号に該当行為を列挙しています。旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の登録を受けなければならないと定められています。 登録を左右するのは、事業の実態がこれらの号に当たるかどうかという点です。号ごとの文言を読み込む地道な作業が欠かせません。
- 「この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。」
- 「旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない。」
条文上、第五号は「他人の経営する」宿泊施設を対象としている
旅行業法第二条第1項第五号は、「他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して」運送等サービスを提供する行為を挙げています。条文がこの文言で対象を限定している点は確認できますが、「自社宿泊だけなら登録不要」と明示した観光庁の公式記載は今回の調査では見当たりませんでした。 断定はできない論点として扱うべきです。
- 「他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを提供する行為」
判断に迷う場合は登録行政庁の窓口へ——本記事では断定しない
観光庁「旅行業法概要」は、報酬を得て一定の行為を行う事業を営もうとする者に、旅行業又は旅行業者代理業の登録を義務づけていると案内しています。同ページは登録を行う行政庁について「第1種以外の登録については各都道府県にお問い合わせください。」とも案内しており、個別の判断は観光庁または各都道府県の担当窓口に確認するのが確実です。 SEOの施策設計より前に、この判断を済ませておく必要があります。
- 「旅行業法においては、報酬を得て一定の行為(注1)を行う事業を営もうとする者は、観光庁長官又は都道府県知事による旅行業又は旅行業者代理業(以下「旅行業者等」といいます。)の登録を受けなければならないとされています(旅行業法第2条及び第3条)。」
出典:旅行業法(昭和二十七年法律第二百三十九号)|e-Gov法令検索、旅行業法概要|観光庁
合同会社ワンブリマーケティングについて
合同会社ワンブリマーケティングは、SEO・オウンドメディア運用・生成AI活用支援を専門とする企業です。ホテル・旅館・簡易宿所・民泊運営者のように、旅館業法の営業区分や公正取引委員会のOTA確約計画といった業種固有の一次情報を踏まえたサイト運営が必要な事業者を中心に、キーワード設計から記事制作、更新運用の設計までを一貫して支援しています。自社に合った進め方を相談したい方は、お問い合わせからご連絡ください。
ホテルのSEO対策についてよくある質問
Q1. ホテルのSEOとは何ですか?
ホテルのSEOとは、旅館業法上「旅館・ホテル営業」に当たる宿泊施設が、検索結果での表示や直接予約の獲得を改善するための施策全般を指します。厚生労働省の集計では旅館業の営業許可施設数は93,475施設(令和6年3月末現在)、観光庁の確定値では2025年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊にのぼります。 施策を検討する前に、自社の営業区分を確認しておきましょう。
Q2. ホテルSEOは何から始めるべきですか?
まず自社が「旅館・ホテル営業」「簡易宿所」「住宅宿泊事業」のどの類型に当たるかを確認しましょう。そのうえでOTAとの契約書に含まれるレートパリティ条項の内容を確認することが、直接予約を増やす施策の前提になります。 表示文言や技術対応は、この2点を確認した後に検討するのが安全な順序です。この順番を逆にすると、表示だけ整えても契約条件と矛盾する事態になりかねません。
Q3. OTAが強くても公式サイトのSEOは必要ですか?
Hotel Centerの無料の予約リンクは、ホテルの公式予約サイトを対象とした仕組みです。Googleビジネスプロフィールの予約URLにはOTAのリンクを使用できないと明記されており、公式サイトが存在すること自体が前提条件になっています。 OTAの集客力とは別に、公式サイトの整備が欠かせない理由です。
Q4. 小規模なホテル・旅館でもSEOは有効ですか?
民泊・簡易宿所を含めると、住宅宿泊事業の届出住宅数は42,070件(令和8年7月15日時点)にのぼります。一定の市場規模がある一方、住宅宿泊事業法が定める年間180日という制約を踏まえた集客設計が欠かせません。 規模の小さい施設ほど、この制約と施策の整合性を先に確認しておくべきです。集客を強めるほど、稼働日数の管理がより重要になる仕組みです。
Q5. 自社サイトで他社ホテルのプランも紹介したい場合、旅行業登録は必要ですか?
旅行業法第二条第1項第五号は、「他人の経営する」運送機関又は宿泊施設を利用する行為を対象としています。この条文の書きぶりから外れない限り、自社サイトでの他施設紹介が旅行業に該当し得ますが、「自社宿泊のみなら登録不要」と明示した公式記載は確認できていません。 個別の判断は、登録行政庁である観光庁または各都道府県の窓口へ相談するのが確実です。
まとめ:ホテルのSEO対策は一次情報を土台に予約導線を見直そう
ホテルのSEOは、法令とGoogleの公式仕様を理解して初めて安全に進められます。「ホテル営業」「旅館営業」は2018年に「旅館・ホテル営業」へ一本化されており、OTAとのレートパリティも公正取引委員会の確約計画の対象であって「最安値にできる」と保証されたわけではありません。Googleにホテル専用の構造化データは存在せず、露出経路はHotel Centerの無料の予約リンクです。 まずは自社サイトの表示文言と予約導線を、条文や公式仕様と照らして点検してみてください。
統計の使い方には注意が必要だと感じています。ある宿泊事業者の集客相談では、業界全体の延べ宿泊者数の伸びを、そのまま自社施設の集客見込みとして扱おうとする資料が実際にありました。全体の数字と自社施設の商圏・客層は別物として扱うべきだと考えています。