ポータルサイトへの反響課金に頼りながら、自社サイトのSEOに手を付けられずにいる不動産会社は少なくありません。不動産のSEOは、不動産の表示に関する公正競争規約を踏まえた設計が前提です。本記事では、おとり広告への実務対応やポータル依存脱却の技術対応、MEOとの役割分担、フェーズ別のコンテンツ設計を解説します。読み終える頃に得られるのは、自社が何から着手すべきかを判断できる状態です。
不動産SEOがまず向き合うべき「不動産の表示に関する公正競争規約」とは
士業のSEO対策は広告規制とどう両立する?表現の線引きを解説では士業の広告規制とSEOの両立を扱いましたが、不動産は根拠法も規制団体も異なります。不動産のSEO対策で最初に押さえるべきは、景品表示法第36条第1項に基づく「不動産の表示に関する公正競争規約」です。 物件ページのタイトルや見出しの書き方は、この規約を土台に設計する必要があります。

根拠は景品表示法第36条第1項――内閣総理大臣・公正取引委員会が認定する規約
表示規約の根拠は景品表示法第36条第1項です。「事業者又は事業者団体は、内閣府令で定めるところにより、景品類又は表示に関する事項について、内閣総理大臣及び公正取引委員会の認定を受けて、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保するための協定又は規約を締結し、又は設定することができる。」と定められています。
自社ウェブサイトの物件情報も規約の「表示」に含まれる
不動産公正取引協議会連合会は、ホームページや不動産情報サイトに掲載するインターネット上の広告も表示規約第4条が定める表示に当たるとしたうえで、規約が定める表示の第一号は「インターネットによる広告表示」であり、自社サイトの物件ページもここに含まれるとしています。自社サイトだから自由に書けるという認識は誤りです。
違反すると警告または50万円以下の違約金――不動産公正取引協議会連合会の仕組み
不動産公正取引協議会連合会は、全国9つの地区協議会が構成する任意団体として運営されています。規約違反が認められたときにまず科されるのは、警告または50万円以下の違約金です。 規約の適用範囲は、加盟事業者かどうか・物件種別・広告媒体によって解釈が変わる場合があります。表現に迷ったときは、所属の不動産公正取引協議会に確認しておきましょう。
従わない場合は500万円以下の違約金・資格停止・除名もありうる
警告を受けても是正しない場合、措置はさらに重くなります。表示規約が定めているのは、「公正取引協議会は、事業者が前項の規定に違反していると認めるときは、当該事業者に対し、500万円以下の違約金を課し、公正取引協議会の構成員である資格を停止し、除名処分をし、又は消費者庁長官に対し、必要な措置を講ずるよう求めることができる。」という内容です。
出典:e-Gov法令API「不当景品類及び不当表示防止法」、不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」、不動産公正取引協議会連合会「不動産公正取引協議会連合会とは?」
成約済み物件を消さず掲載し続けると「おとり広告」になる――物件ページの更新運用
物件ページを増やせば増やすほどSEOに有利、という発想が根強くあります。しかし不動産の場合、成約済みの物件を削除せず残し続けると、規約が禁じる「おとり広告」に該当します。 ここでは、おとり広告の具体的な態様と、実際に協議会から措置を受けた実例を見ていきましょう。更新の運用体制づくりが、SEO施策より優先すべき事項です。

「物件は存在するが取引の意思がない」表示はおとり広告に当たる
表示規約第21条は、「物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示」をおとり広告として禁じています。おとり広告ガイドラインは、この態様の例として「広告に表示した物件が成約済みの不動産又は処分を委託されていない他人の不動産である場合」を挙げています。成約済みの物件を残すこと自体が、規約違反への該当事由です。
更新を怠った実例――最長1年4か月掲載され続けたケースと「2週間」という目安
おとり広告ガイドラインは、物件情報の更新期間を最長でも2週間とし、契約済みが判明した物件はその前でもすみやかに削除するよう求めています。それでも、首都圏不動産公正取引協議会は2026年5月度、自社ホームページで「契約済み又は入居済みとなった後、長いもので1年4か月以上、短いものでも6か月以上継続して広告(各3件)」を掲載していた事業者に違約金を科しました。
2025年度は全国1,332件の違反物件情報、うち332件がおとり広告
首都圏不動産公正取引協議会のポータルサイト広告適正化部会によると、2025年度に共有された違反物件情報は全国で1,332件、うち契約済みで取引できないおとり広告は332件でした。これは主要ポータル5社が2014年4月から違反物件情報を共有している部会構成会社間のデータであり、日本全国の不動産広告の違反総数ではありません。
出典:不動産公正取引協議会連合会「『おとり広告』の規制概要及びインターネット広告の留意事項(おとり広告ガイドライン)」、首都圏不動産公正取引協議会 ポータルサイト広告適正化部会「2025年度の違反物件情報等の共有結果」、首都圏不動産公正取引協議会「2026年5月度の措置」
「地域No.1」「完全」は書けるか――タイトル・見出しのSEOライティングと特定用語の線引き
SEOのタイトルは、クリック率を上げるために強い言葉を使いたくなるものです。しかし地域No.1・完全・新築といった表現は、いずれも表示規約の対象になります。タイトルタグやmeta descriptionにそのまま使うと、規約違反につながりかねません。 ここで整理するのは、SEOライティングでよく使われる4つの表現の線引きです。

「新築」は築1年未満かつ未入居の2条件がそろって初めて使える
表示規約は新築の定義を、「建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものをいう。」と定めています。築1年未満であることと、居住の用に供されたことがないことの2条件をどちらも満たす必要があり、片方だけでは新築と書けません。 SEOのタイトルで築年数を強調する際は、この2条件を必ず確認しましょう。
最上級・完全性・優位性を示す言葉は根拠資料があれば使える
表示規約第18条第2項は、「事業者は、次に掲げる用語を用いて表示するときは、それぞれ当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、当該用語を使用してはならない。」と定めています。最上級・完全性・優位性を示す用語は、使用禁止ではなく、根拠資料を持っていれば使えます。 日本一・業界一・完全・万全なども同じ扱いです。
徒歩分数は道路距離80メートルを1分・端数切り上げで算出する
表示規約施行規則は、「徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること。この場合において、1分未満の端数が生じたときは、1分として算出すること。」と定めています。81メートルなら2分と表示する必要があり、直線距離では計算できません。
該当するかどうかの判断は、根拠資料の内容次第です。使用前に協議会へ確認しましょう。
出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」
ポータルサイト依存からどう脱却するか――地域名×物件種別のキーワード設計と技術対応
ポータルサイトへの反響課金を減らしたいという相談は、不動産会社から特に多く寄せられます。中小企業のSEO対策は何から始める?優先順位と時間の使い方を解説では、専任担当者がいない事業者の優先順位づけを扱いました。不動産会社がポータル依存から脱却するために欠かせないのは、地域名×物件種別のキーワード設計に加えて、重複URLやファセットナビゲーションといった技術対応です。

地域名×物件種別×条件のキーワード設計でロングテールを拾う
地域名だけのキーワードは競合が多く、上位表示が難しくなります。地域名×物件種別×条件を掛け合わせると、検索需要は小さくなる一方、探している物件像が明確な読者に届きやすくなります。 エリア×間取り×家賃帯×ペット可といった組み合わせは、物件検索そのものの絞り込み条件と重なるため、コンテンツと物件ページの両方で使える設計です。
重複URL・削除済み物件ページはソフト404にしない
Googleは重複コンテンツの発生自体を問題視していません。成約済み物件を完全に削除する場合は404か410を返し、他のページへのリダイレクトはソフト404として扱われるため避けましょう。 検索結果が0件になる場合も同様の考え方で、Googleが示す案内は「フィルタの組み合わせで結果が返されない場合は、HTTP 404 のステータス コードを返します。」という一文です。
エリアページの量産は誘導ページスパムに触れうる
Googleは、「特定の地域や都市を対象としたドメイン名やページを複数持ち、それらのドメインから 1 つのページにユーザーを誘導する」ことを誘導ページの不正使用の例に挙げています。ただし問題になるのは有用性の低い中間ページであり、中身のあるエリアページを作ること自体が禁止されているわけではありません。 生成AI検索が広がっても、この基本的な考え方は共通です。
出典:Google検索セントラル「正規化とは」、Google検索セントラル「ファセット ナビゲーション URL のクロール管理」、Google検索セントラル「Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー」
不動産SEOとMEO(Googleビジネスプロフィール)の役割分担
SEOに取り組んでいればMEOは不要、と考える不動産会社は少なくありません。不動産は地域名を伴う検索が多く、地図枠と自然検索の両方に接点が生まれる領域です。しかし検索エンジンでの評価とGoogleマップでの見つかりやすさは、評価される要素がそもそも異なります。 来店や現地案内が発生する賃貸仲介店舗では、両者の役割分担の理解が出発点です。

ローカル検索の順位は「関連性・距離・知名度」で決まる
Googleが示す説明は、「ローカル検索結果は、主に関連性、距離、知名度に基づいて表示されます。これらの要素を組み合わせて、最適な検索結果が表示されます。」というものです。知名度はビジネスにリンクするサイトの数やクチコミの数にも基づいており、「クチコミ数が多く評価の高いビジネスは、ローカル検索結果のランキングが高くなります。」という記載です。
バーチャルオフィスは不可、営業拠点ごとに1プロフィールが原則
Googleのガイドラインが示す条件は、「郵送先住所を借りており、その住所では実際にサービスを提供していない場合(バーチャル オフィスとも呼ばれます)は、ビジネス プロフィールをご利用いただくことはできません。」というものです。また、「アカウントが同じか別かに関わらず、ビジネスの拠点ごとに複数のページを作成することはできません。」とも述べており、営業拠点ごとに1プロフィールが原則になります。
「不動産仲介士」は個人専門家に含まれる――Google公式が名指しする数少ない業種
Googleのガイドラインは、「個人専門家とは、対外的に専門業務を行い、通常は独自の顧客層を抱える専門家です。医師、歯科医師、弁護士、投資顧問、保険代理人、不動産仲介士などが個人専門家に含まれます。」としており、不動産仲介士を名指ししている数少ない業種です。 個人専門家としてプロフィールを持てるのは専門家本人に限られ、サポートスタッフや販売員は対象外です。
出典:Google ビジネス プロフィール ヘルプ「Google のローカル検索結果のランキングを改善するヒント」、Google ビジネス プロフィール ヘルプ「Google に掲載するビジネス情報のガイドライン」
検索意図(査定・売却・購入・賃貸)別のコンテンツ設計とE-E-A-Tの示し方
BtoBのSEOとBtoCの違いとは?検索者と決裁者のズレから解説では検索する人と意思決定に関わる人のズレを扱いましたが、不動産の購入・売却でも配偶者や子世代が検索し、意思決定は世帯で行われる場面があります。ここで整理するのは、査定・売却・購入・賃貸という4つのフェーズごとのコンテンツの型と、反響への導線です。

「住宅購入の7つのヒント」は独自性が乏しい――Google自身が挙げるコモディティコンテンツの例
Googleはコモディティ化されたコンテンツの例に「初めて住宅を購入する人向けの 7 つのヒント」を挙げ、独自の洞察をほとんど提供しないとしています。独自性のある例として挙げられているのは「検査を免除して費用を節約した理由: 下水道管の内部調査」です。不動産会社を名指ししたものではありませんが、住宅購入コラムはこの型に当てはまりやすい点を見落とせません。
ネットで情報収集しても問い合わせは別経路――査定・売却・購入・賃貸で反響への導線は変わる
国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査によると、民間賃貸住宅入居世帯はインターネットを通じた情報収集が61.1%である一方、インターネットを通じた問い合わせ・説明会や内見の申込みは20.7%にとどまります。 ネットで情報収集しても、問い合わせは別経路になりやすいという実態です。フェーズによって、読者が求める情報も反響への導線も変わります。
著者情報・免許証番号の明記はE-E-A-Tと規約の両方が求める共通項
Googleは、「コンテンツの著者が誰であるかを明確にしていますか。」と問いかけ、著者情報の明示をE-E-A-Tの要件に挙げています。表示規約の別表がインターネット広告に義務づける事項の一つが「広告主の宅建業法による免許証番号」です。著者情報の明記は、SEO上の努力目標ではなく、規約が求める必要事項でもあります。
出典:Google検索セントラル「Google 検索の生成 AI 機能向けにウェブサイトを最適化する」、国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査 報告書」、Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」
合同会社ワンブリマーケティングについて
合同会社ワンブリマーケティングは、SEO・オウンドメディア運用・生成AI活用支援を専門とする企業です。専任のマーケ担当を置きにくい事業者や、規約対応など業界特有の制約に悩む事業者を中心に、キーワード設計から記事制作、効果測定までを一貫してサポートしています。 自社の不動産サイトに合わせた進め方を相談したい方は、お問い合わせからご連絡ください。
不動産のSEO対策についてよくある質問
Q1. 不動産会社にとってSEOとは、具体的に何をすることですか?
不動産会社のSEOは、規約を踏まえた物件ページ・コラム記事の運用と、重複URLやファセットナビゲーションといった技術対応を組み合わせて進める施策です。つまり、記事制作だけを指す言葉ではないということです。成約済み物件の削除・更新を怠ると、それ自体が誇大広告等の禁止規定に触れうるため、コンテンツ制作と同じくらい運用体制の整備が重要になります。
Q2. 不動産のSEOは、SUUMOやHOME’Sなどのポータルサイトに検索結果で勝てますか?
ポータルサイトと自社サイトでは、検索結果に表示される情報の性質が異なります。宅地建物取引業者数は11年連続で増加しており、令和6年度は13万2,291社にのぼりますが、競合の多さと自社サイトがポータルに勝てるかどうかは別の問題です。 自社サイトの役割は、ポータルでは出しにくい専門性や独自の情報を発信し、指名検索や信頼獲得につなげることです。
Q3. YMYLとは何ですか?不動産のSEOとどう関係しますか?
GoogleはYMYLを、人の健康や安全、経済的安定、社会の福利厚生に大きく影響する可能性のあるトピックと説明しています。Googleは不動産や住宅購入を名指ししてYMYLに含めているわけではありませんが、高額な取引であり生活の基盤に関わる不動産は、経済的安定に大きく影響しうる領域だと当社では捉えています。著者情報や運営者情報を明確にしておくことは、信頼性を示す土台です。
Q4. 不動産SEOの外注費用の相場はどのくらいですか?
Googleや公的機関が示す費用の公式なベンチマークは存在しません。費用は事業規模や、すでに抱えている技術的な課題の量によって前提が変わるためです。 物件ページの点数が数十件の会社と数千件の会社では、必要な作業量そのものが違います。 重複URLの整理状況や物件ページの更新体制など、自社の現状を洗い出したうえで相見積もりを取るのがおすすめです。
Q5. 不動産SEOの効果が出るまで、どのくらいの期間がかかりますか?
Googleは、検索エンジン最適化のスターターガイドで、ランキングがトップになるような秘訣はないという姿勢を示しています。不動産SEOも例外ではなく、期間を数値で断定することはできません。 競合の状況も、すでにあるページの質も会社ごとに違うためです。規約に沿った運用体制と技術対応を先に整えたうえで、中長期の取り組みとして捉えておきましょう。
まとめ:規約を守りながら反響につながる不動産SEOを実践しよう
不動産のSEOは、不動産の表示に関する公正競争規約を前提にした設計が欠かせません。成約済み物件を削除せず残すとおとり広告に該当するため、更新運用の体制づくりが施策の土台です。加えて、重複URLやファセットナビゲーションといった技術対応、SEOとMEOの役割分担、査定・売却・購入・賃貸というフェーズ別のコンテンツ設計も欠かせません。まずは自社の物件ページの更新体制と、重複URL・MEOの設定状況を点検するところから始めてみましょう。
「ポータルの広告ルールと自社サイトは別」という思い込みは根強くあります。ある地方の売買仲介を手がける会社では、担当者が表示規約の存在を把握しないまま、自社サイトの物件ページの表現を検討している最中だったのです。規約の内容を先に確認してから、ライティングの方針を決めるべきだと考えています。