整体院のSEO対策では、症状名や施術効果をサイトにどこまで書けるか、根拠がないまま迷っていませんか。整体院に柔道整復師法のような業法上の広告規制は及びませんが、かといって無規制でもないというのが実際のところ。あはき法・最高裁判例・広告ガイドラインの立て付けと、症状名キーワードの扱い方を整理します。読み終えれば、自院サイトの表現を根拠つきで判断できるようになります。
整体院にSEO対策が必要な理由――整体院の数を示す公的統計は存在しない

整体院のSEO対策を考えるとき、まず気になるのが市場の規模ではないでしょうか。しかし「整体院は全国に何店あるのか」という、経営者なら誰もが気になる数字を示す公的な統計は、実はどこにも存在しません。 この数字が存在しない理由そのものが、整体院という業態の法的な立ち位置を映す手がかりになります。まずはこの構造から、順を追って確認していきましょう。
衛生行政報告例の施術所5区分に、整体院・カイロプラクティック院に該当する区分はない
厚生労働省「令和6年衛生行政報告例」が数える施術所は、あん摩・マッサージ・指圧を行う施術所、はり・きゅうを行う施術所など5区分で構成されています。整体院・カイロプラクティック院に該当する区分はありません。 概況版PDF全16ページを機械カウントした結果、「整体」「医業類似行為」の語はいずれも0件でした。対照的に、有資格の柔道整復の施術所は次のとおり国が数え続けています。
- 「「柔道整復の施術所」は50,924 か所で、前回に比べ8 か所(0.0%)増加している。」
事故情報だけは公的に把握されている――2009年9月〜2017年3月に1,483件
事業所数の統計がない一方で、事故に関する情報だけは消費者庁に集約されています。この非対称性こそが、整体院のSEOで情報の正確性が特に問われる理由です。 平成29年5月26日公表の注意喚起には、次の記載があります(データは平成21年9月〜平成29年3月末の登録分)。
- 「消費者庁には、「整体」、「カイロプラクティック」、「リラクゼーションマッサージ」などの法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術で発生した事故の情報が、1,483 件寄せられています(平成21 年9月1日から平成29 年3月末までの登録分)。そのうち、治療期間が1か月以上となる神経・脊髄の損傷等の事故が240 件と全体の約16%を占めています。」
「整体は危険」と飛躍させる話ではなく、統計がない領域だからこそ発信内容の裏づけが重要という文脈として受け止めてください。
「整体院のSEO」の検索結果は、整骨院と一括りにした複合KW記事が大半を占める
整体院のSEO対策に関する検索結果を見ると、整骨院・接骨院・治療院とひとまとめに扱う記事が上位の大半を占めているのが実情です。整体院を単体の主語にして、法的な立て付けから解説した記事はまれです。 整体院と整骨院は適用される法律の構造がそもそも異なるため、整骨院向けの答えをそのまま使い回すこと自体にリスクがあります。この違いを次の章から順に整理していきます。
出典:令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省、法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に(消費者庁 News Release 平成29年5月26日)|大阪市サイト掲載版
整体院は柔道整復師法・あはき法の名宛人ではない――整骨院との決定的な違い

整体院と整骨院は、検索する人には似た言葉に見えるかもしれません。しかし、適用される法律の構造はまったく異なります。整骨院のSEO対策|柔道整復師法の広告規制とサイトの線引きを解説では、整骨院がどこまで規制されるかを扱いました。では、整体院はどうか。 本章では条文のレベルまで踏み込んで、両者の違いを確認していきます。
柔道整復師法は「柔道整復師」「施術所」を定義し、業務独占を定めている
柔道整復師法は、柔道整復師と施術所という語を法律用語として定義しています。「柔道整復師」「施術所」はいずれも国家資格に基づく法律用語であり、看板の呼び方とは別物です。 医師である場合を除き、柔道整復師でなければ業として柔道整復を行うことはできません。まず押さえておきたいのは、法律上の呼称が「施術所」であり、「整骨院」「整体院」はどちらも法律用語ではないという整理です。
- 「この法律において「柔道整復師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者をいう。」
- 「医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行なつてはならない。」
柔整法24条・あはき法7条の対象事項に「整体業」「整体院」は含まれない
柔道整復師法第24条とあはき法第7条は、どちらも広告を制限する条文です。主語は「何人も」ですが、規律の対象事項は「柔道整復の業務又は施術所」「あん摩業…又はこれらの施術所」であり、整体の業務や整体院は文言に含まれていません。 「何人も」だけを取り出して整体院にも及ぶと読むのは誤りです。次の2条文を確認しましょう。
- 「柔道整復の業務又は施術所に関しては、何人も、文書その他いかなる方法によるを問わず、次に掲げる事項を除くほか、広告をしてはならない。」
- 「あん摩業、マツサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。」
唯一の例外「届出医業類似行為業者」は、現在は実質的になれる道がない
あはき法には、整体・カイロ系でありながら広告制限がかかる唯一の例外があります。あはき法第12条の2が定める「届出医業類似行為業者」です。 ただしこれは昭和22年の法律公布時点の既得権者に対する経過措置であり、現在新規に該当する方法は条文上存在しません。「届け出れば整体院も施術所になれる」という理解は誤解にあたります。
- 「この法律の公布の際引き続き三箇月以上第一条に掲げるもの以外の医業類似行為を業としていた者であつて、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律(昭和三十九年法律第百二十号。以下一部改正法律という。)による改正前の第十九条第一項の規定による届出をしていたものは、前条の規定にかかわらず、当該医業類似行為を業とすることができる。ただし、その者が第一条に規定する免許(柔道整復師の免許を含む。)を有する場合は、この限りでない。」
出典:柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)|e-Gov法令API、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)|e-Gov法令API
整体院の「医業類似行為」はどこまで禁止されるか――判例と行政解釈のギャップ

あはき法第12条だけを取り出すと「整体は違法」という誤読が生まれかねません。クリニックのSEO対策はどこまで書ける?医療広告等ガイドラインから解説では、医療機関に及ぶ広告規制を扱いました。整体院の場合は「医業に準じる規律」という文脈で理解する必要があります。 最高裁の限定と行政解釈の広さを、必ずセットで確認していきましょう。
あはき法12条は「医業類似行為」を業として行うことを禁止している
あはき法第12条は、第一条に掲げるあん摩マッサージ指圧・はり・きゅうを除いた医業類似行為について、業として行うことを禁止する条文です。柔道整復は柔道整復師法の定めによるため、この条文の適用からは外れます。ただし、この条文だけを根拠に「整体・カイロプラクティックは違法だ」と断定することはできません。 禁止処罰がどこまで及ぶかは、次の項で見る最高裁の判示によって限定されているからです。
- 「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。」
最高裁は禁止処罰を「人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為」に限定した
昭和35年1月27日、最高裁判所大法廷はHS式無熱高周波療法をめぐる事件で、あはき法第12条の禁止処罰の範囲を限定する判断を示しました。医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは健康に害を及ぼす虞があるから、という理由づけに立つ判断です。「最高裁が整体を認めた」わけではなく、禁止処罰の対象を絞る判示にとどまる点を押さえておきましょう。 判示の文言は次のとおりです。
- 「ところで、医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼす虞があるからである。それ故前記法律が医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならないのであつて、このような禁止処罰は公共の福祉上必要であるから前記法律一二条、一四条は憲法二二条に反するものではない。」
一方、行政解釈は「少しでも危害のおそれがあれば」対象とする――判例とのギャップ
この判示を受けて、厚生省医務局長は昭和35年3月30日付けで各都道府県知事あてに通知を発出しました。判例が「人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為」に限局したのに対し、行政解釈はより広い範囲を対象として捉えています。 ここに判例の限定と行政解釈の広さというギャップが生まれ、整体院が自院サイトの表現を判断するうえでの難しさにつながっています。通知の文言は次のとおりです。
- 「なお、当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となるものと解されること。」
都道府県の現場認識と厚労省の解釈にもずれがあり、総務省が指導徹底を勧告した
国と現場の認識にも、ずれが存在します。ある都道府県の施術所事務処理マニュアルは、整体院をあはき法・柔法の「対象外」と整理しています。 一方、厚生労働省は国家資格の有無にかかわらず行政指導の対象にできると解釈しており、この食い違いを総務省が問題視して令和2年11月17日に勧告しました。それぞれの記載は次のとおりです。
- 「◇あはき柔整と混同されやすいもの 例)カイロプラクティック院、整体院 等 ⇒ あはき法、柔法の対象外」
- 「医業類似行為により健康被害が生じた場合、厚生労働省は、当該施術が国家資格を要するものか否かにかかわらず、あはき法又は柔整法(以下「あはき法等」という。)に基づき、施術者等を行政指導の対象とすることは可能と解釈しており、特に、整体、カイロプラクティック等の名称の下に行われている施術については、累次にわたり保健所等関係機関と連携した指導の徹底を都道府県、保健所を設置する市及び特別区に要請している。」
- 「保健所では、受け付けた医業類似行為による健康被害等に関する相談に対して、多くは事実確認を行わず、関係機関の案内のみ実施している実態がみられたことから、都道府県等に対し、関係法令に基づく指導の権限を示した上で、事業者等に対する必要な指導の徹底を要請するよう厚生労働省に求めました。」
出典:最高裁判所大法廷 昭和35年1月27日判決(昭和29(あ)第2990号 あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法違反)全文|裁判所、消費者事故対策に関する行政評価・監視-医業類似行為等による事故の対策を中心として- 結果報告書|総務省行政評価局
あはき・柔整広告ガイドラインⅦ章――整体院を含む「無資格者」の広告も対象にしている

業法によらない一般法とSEOをどう両立させるかは、士業のSEO対策は広告規制とどう両立する?表現の線引きを解説でも扱った論点です。整体院にとっては、令和7年2月18日発出のあはき・柔整広告ガイドラインⅦ章がこれにあたります。 このⅦ章は整体を含む「無資格者」の広告を正面から扱っており、一般向けの解説記事にはほとんど出てきません。条文レベルで確認していきましょう。
ガイドラインは「無資格者」を定義し、その広告のあり方を正面から検討した
あはき・柔整広告ガイドラインは、あはき・柔整の免許を持たない者を「無資格者」と定義しています。消費者庁に無資格者による行為で発生した事故の情報が寄せられていることを踏まえ、無資格者の広告も含めた広告のあり方が検討されました。 「無資格者」はガイドラインが定義した用語であり、記事でも出所を添えて使う必要があります。趣旨部分の文言は次のとおりです。
- 「③ 無資格者による行為により発生した事故の情報が寄せられていること等を踏まえ、その広告の適切な在り方について、本指針に定めることとした。」
対整体院の位置づけは「関係団体等による自主的な取組を促すもの」――法的強制力はない
Ⅶ章が対象とする範囲は、施術者・施術所だけでなくマスコミ・広告代理店等も含む点でⅡ4(1)と同様です。ただしその位置づけは「関係団体等による自主的な取組を促すもの」であり、法的強制力のある規制ではありません。 「整体院にも広告規制がかかる」と読める書き方は、事実を超えた説明になってしまいます。原文は次のとおりです。
- 「無資格者の行為に関する広告として、本項目の対象となるのは、本指針Ⅱの4(1)と同様とし、関係団体等による自主的な取組を促すものである。」
インフルエンサー・アフィリエイターを使った集客も同じ射程に入る
ガイドラインⅡ4(1)が定める対象者の範囲は、Ⅶ章にもそのまま引き継がれます。施術者・施術所に限らず、マスコミ・広告代理店・インフルエンサー・アフィリエイターも対象に含まれます。 PR案件やアフィリエイト施策を検討する整体院にとって、外部の発信者まで含めて表現を管理する必要があるという点で、実務的に効いてくる論点です。原文は次のとおりです。
- 「したがって、施術者又は施術所だけでなく、マスコミ、広告代理店、いわゆるインフルエンサー及びアフィリエイター等、何人も広告規制の対象とされるものである。」
- 「本指針において、「いわゆるインフルエンサー及びアフィリエイター」とは、個人のホームページやブログ、SNS 等で商品やサービスを紹介し、広告料収入を得る者をいう。」
出典:あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針(あはき・柔整広告ガイドライン)|厚生労働省
整体院の症状名キーワード施策に潜む二重の壁――広告ガイドラインとGoogleのスパムポリシー

「腰痛」「肩こり」等の症状名で上位を取り、地域名と掛け合わせてページを量産する。これは整体院SEOで最も定番とされる施策の一つです。しかし実は、2つのまったく異なる一次ソースから同時に注意を促されている施策でもあります。 厚労省のガイドラインとGoogleのスパムポリシーという、まったく別の角度から順に見ていきましょう。
「腰痛」「膝の痛み」「肩こり・疲労」等の症状表現はウェブサイトにも書くべきでないとされている
あはき・柔整広告ガイドラインⅦ.3(6)は、無資格者の行為が国家資格を要する業務とは異なると位置づけています。そのうえで、「腰痛」「膝の痛み」等の痛み症状や、慢性の「肩こり・疲労」等の症状に対する施術の表現を名指ししています。 禁止ではなく、自主的取組として「表現すべきでない」という位置づけです。原文は次のとおりです。
- 「無資格者の行為は、国家資格が必要なあん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復の業務とは全く異なることから、国家資格を必要とする業を行っていると利用者に誤認を与えるような表示は不適切であり、これは、写真、画像等を用いた場合においても同様である。」
- 「また、「腰痛」、「膝の痛み」等の痛み症状に対する施術、慢性の「肩こり・疲労」等の常態的な症状に対する施術の表現は、特定の疾患に対する施術或いは疾患の原因となる可能性を含んでいる症状に対する施術に当たる可能性が高いことから、広告及びウェブサイト等に表現すべきでないものである。」
症状表現が問題視される理由は「あはき・柔整の業務と誤認される」という筋
この項目のタイトルは「あはき師法、柔整師法等に抵触する内容を含むもの」となっています。症状表現が問題視される理由は、あはき・柔整の業務と誤認されるという筋であり、薬機法上の効果効能表現とは別の論点です。 総務省報告書が引く逐条解説の定義も、まさに症状名を使って医業類似行為を説明しており、症状名そのものが業務の線引きを示す指標として扱われてきた経緯があります。
逐条解説による医業類似行為の定義そのものが、症状名を並べて書かれている
同報告書によると、逐条解説はあん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復以外の医業類似行為を民間療法と同義のものと整理し、その説明を「腰痛、肩こり、疲労等の症状のある者に対して」施術するもの、という書き出しで始めています。ただし報告書自身が、その種類や範囲は必ずしも明確となっていないと述べている点もあわせて押さえておきましょう。
症状×地域の掛け合わせページ量産は、Googleのスパムポリシーとも衝突する
「〇〇市 整体」「△△駅 整体」のように、地域名だけ変えて中身がほぼ同一のページを量産する施策は、見直しの対象になります。Googleのスパムポリシーが挙げる「誘導ページの不正使用」の例に該当しうるからです。 症状表現(厚労省側)と地域量産(Google側)は別の一次ソースであり、両方を知って初めて施策全体のリスクが見えてきます。該当箇所は次のとおりです。
- 「特定の地域や都市を対象としたドメイン名やページを複数持ち、それらのドメインから 1 つのページにユーザーを誘導する」
- 「サイト内における階層が明確に定義されていないため、構造としては検索結果の一覧に近く、内容が類似する複数のページを作成する」
出典:あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針(あはき・柔整広告ガイドライン)|厚生労働省、消費者事故対策に関する行政評価・監視-医業類似行為等による事故の対策を中心として- 結果報告書|総務省行政評価局、Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー|Google 検索セントラル
「書けないこと」だけでなく「書くべきこと」――整体院が示せる安全情報

症状名を前面に出して訴求できないなら、いったい何を書けばよいか迷うところです。前章で見たとおり、症状名を掲げた表現には自主的取組としての制約がかかります。その答えの1つが、カイロプラクティック療法の禁忌事項という、症状訴求に頼らずに書けて、むしろ信頼構築につながる情報です。 厚生省の通知を手がかりに、整体院が書くべき安全情報を順番に整理していきます。
厚生省は「カイロプラクティック療法に対する取扱い」という通知を発出している
平成3年6月28日、厚生省健康政策局医事課長は「医業類似行為に対する取扱いについて」という通知を発出しました。このうちカイロプラクティック療法に関する部分は、①禁忌対象疾患の認識、②危険な手技の禁止、③適切な医療受療の遅延防止、④誇大広告の規制の4点を定めています。 ただしカイロプラクティック療法についての通知であり、「整体院もこれに従わなければならない」とは言えません。通知の背景は次のとおりです。
- 「近時、カイロプラクティックと称して多様な療法を行う者が増加してきているが、カイロプラクティック療法については、従来よりその有効性や危険性が明らかでなかったため、当省に「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」のための研究会を設けて検討を行ってきたところである。」
対象とすることが適当でない疾患の一覧――禁忌の開示は信頼につながる情報になる
同通知は、カイロプラクティック療法の対象とすることが適当でない疾患を具体的に列挙しています。症状名を訴求のために掲げるのではなく、対象外となる疾患を開示情報として示すことは、Googleが重視する信頼性・安全性の情報として機能しえます。 前章で扱った「誤認を招く症状訴求」とは性質が異なる情報です。原文は次のとおりです。
- 「カイロプラクティック療法の対象とすることが適当でない疾患としては、一般には腫瘍性、出血性、感染性疾患、リュウマチ、筋萎縮性疾患、心疾患等とされているが、このほか徒手調整の手技によって症状を悪化しうる頻度の高い疾患、例えば、椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症などと明確な診断がなされているものについては、カイロプラクティック療法の対象とすることは適当ではないこと。」
危険な手技の禁止と、症状が改善しない場合の医療機関への橋渡し
同通知は、危険性の高い手技も具体的に名指ししています。とりわけ頚椎への急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、危険の高い行為として禁止する必要があるとされています。 また、症状が軽減・消失しない場合は施術を中止し、速やかに医療機関で精査を受けるよう求める内容も含まれている点が特徴です。手技についての原文は次のとおりです。
- 「カイロプラクティック療法の手技には様々なものがあり、中には危険な手技が含まれているが、とりわけ頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要があること。」
出典:医業類似行為に関する関係通知(昭和32年医発799/昭和35年医発247の1/平成3年医事58 の再掲)|埼玉県、無資格者によるあん摩マッサージ指圧等の施術について|滋賀県
整体院の屋号・表現には一般法が及ぶ――医師法・医療法・景品表示法と健康増進法の誤解

業法の外側にいても、一般法は業種を問わず及びます。美容クリニックのSEO対策|施術名と価格表示の規制から進め方を解説では、優良誤認表示・価格表示という論点を扱いました。整体院にも同じ一般法が及びますが、健康増進法だけは条文の対象が食品に限られています。 屋号・優良誤認表示・No.1表示の順に、根拠となる条文を確認していきましょう。
医師法・医療法は屋号にも及ぶ――「治療院」「クリニック」等の名称例
医師法第17条は医業を、同法第18条は医師に紛らわしい名称の使用を、それぞれ医師以外に禁じています。医療法第3条第1項も、病院・診療所でない場所に紛らわしい名称を付けることを禁じる条文です。 あはき・柔整広告ガイドラインは、施術所向けの規定として病院・診療所と誤解される名称の例を挙げています。「整体院は治療院と名乗ってはいけない」と断定はできませんが、屋号を検討する際の参考になります。
- 「医師でなければ、医業をなしてはならない。」
- 「医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。」
- 「疾病の治療(助産を含む。)をなす場所であつて、病院又は診療所でないものは、これに病院、病院分院、産院、療養所、診療所、診察所、医院その他病院又は診療所に紛らわしい名称を付けてはならない。」
- 「ア 「病院又は診療所等」と誤解する恐れがあるものを含んでいる名称 ○○診療所、○○治療所、○○治療室、○○療院、○○はり科療院、○○(施術業態を含まない)治療院、メディカル、クリニック、リハビリ、ドック 等」
景品表示法は業種を問わず優良誤認表示を禁じる
景品表示法第5条第1号は、実際より著しく優良であると示す表示を、業種を問わず禁じるものです。主語は「事業者」であり、整体院も当然に含まれます。 施術の効果や他院との優劣について、事実と異なる優良性を示せば対象になります。業法上の広告規制がないことと、景品表示法が及ぶことは別問題です。「整体院は何を書いても自由」という理解は誤りにあたります。
- 「一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」
「地域No.1」「満足度No.1」は合理的な根拠がなければ使えない
整体院のサイトで頻出する「地域No.1」「満足度No.1」表現に欠かせないのは、合理的な根拠づけです。消費者庁の実態調査報告書は、検索結果の上位表示だけを比較対象にした調査を、根拠として不十分な手法と名指ししています。 「◯◯市 整体」で検索して上位に出た店舗を比較したという、よくあるやり方が該当します。
- 「② インターネット検索により、単に検索結果で上位表示された同種商品等を比較対象として選定しているだけで、市場における主要な同種商品等の一部又は全部を比較対象に含めないまま、調査を行っている場合」
【誤情報の是正】健康増進法第65条は「食品」限定――施術の広告表示は文言にない
健康増進法第65条は、「食品として販売に供する物」に関する誇大表示を禁じる条文です。条文の対象は食品であり、施術という役務の広告表示は文言に含まれていません。 整体院の施術広告まで同条の規制対象だとする説明は、条文の文言と合っていないことになります。ただしサプリメント等を物販していれば当然対象になり、広告関連法令は重畳的に適用されうる点もあわせて押さえておきましょう。
出典:医師法(昭和二十三年法律第二百一号)|e-Gov法令API、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)|e-Gov法令API、不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)|e-Gov法令API、No.1 表示に関する実態調査報告書|消費者庁表示対策課、健康増進法(平成十四年法律第百三号)|e-Gov法令API
整体院でもE-E-A-Tは示せる――著者情報とMEO・構造化データの設計

整体院は、国家資格という分かりやすい後ろ盾で権威性を示せない業態です。施術者の経歴をどう書けば信頼につながるのか、判断がつきにくい領域でもあります。しかしGoogleが実際に求めているのは、資格そのものではなく「バックグラウンドや専門分野に関する情報」です。 著者情報の示し方から、ローカル検索・構造化データの扱いまで、順を追って確認していきましょう。
E-E-A-T・YMYLは国家資格の有無を問う概念ではない
Google検索セントラルは、E-E-A-T自体はランキングに直接影響する要因ではないと明記しています。一方で、人の健康や安全に大きく影響する可能性のあるトピックについてはE-E-A-Tが優れたコンテンツを特に重視するとし、これをYMYLと呼んでいます。 整体院のサイトは人の健康や安全に関わるため、この定義に照らして重視される可能性があるトピックの一つです。原文は次のとおりです。
- 「E-E-A-T 自体はランキングに直接影響する要因ではありませんが、E-E-A-T が優れているコンテンツを特定できる要素の組み合わせを使用することは有効です。たとえば、Google のシステムでは、人の健康や安全、経済的安定、社会の福利厚生に大きく影響する可能性のあるトピックについては、E-E-A-T が優れたコンテンツを特に重視します。Google はこうしたトピックを「Your Money or Your Life」、または略して YMYL と呼びます。」
Googleが求めるのは著者の「バックグラウンドや専門分野」の明示――資格の有無ではない
国家資格がない業態では、著者の権威性を「免許」で示すことができません。しかしGoogleが公式に求めているのは「バックグラウンドや専門分野に関する情報」であって、国家資格そのものではありません。 経験年数・研修歴・具体的な症例数といった、その人にしか書けない一次情報こそ、資格に代わる材料です。原文は次のとおりです。
- 「コンテンツの作成者が誰であるかを明確にしている場合は、E-E-A-T のコンセプトに沿っており、成功への道のりを歩んでいるといえるでしょう。著者の情報が求められるであろうコンテンツでは、バイラインを記載するなどして正確な著者の情報を追加することを強くおすすめします。」
- 「バイラインが著者や関係者についての詳細につながるものであり、その人たちのバックグラウンドや専門分野に関する情報をもたらすものになっていますか。」
ローカル検索は「関連性・距離・知名度」の3要素――口コミの集め方には制約がある
Googleビジネスプロフィールヘルプは、ローカル検索結果が主に関連性・距離・知名度に基づいて表示されるとしています。知名度にはビジネスにリンクしているサイトの数やクチコミの数も含まれており、口コミの量と評価がランキングに関わります。 ただし謝礼付きの口コミ収集はGoogleのポリシーで禁止されており、「口コミが集まらない」の近道が、そのまま禁止行為にあたるのが実情です。原文は次のとおりです。
- 「ローカル検索結果は、主に関連性、距離、知名度に基づいて表示されます。これらの要素を組み合わせて、最適な検索結果が表示されます。」
- 「知名度とは、ビジネスがどれだけ広く知られているかを指します。知名度の高い場所ほど、検索結果に表示される可能性が高くなります。この要素は、ビジネスにリンクしているウェブサイトの数やクチコミの数などの情報にも基づいています。クチコミ数が多く評価の高いビジネスは、ローカル検索結果のランキングが高くなります。」
- 「クチコミの投稿や否定的なクチコミの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為。」
構造化データはLocalBusinessの具体的なサブタイプを――MedicalBusinessを推奨する根拠はない
Google検索セントラルは、できる限り具体的なLocalBusinessサブタイプを使うよう求めています。schema.orgにはMedicalBusinessをはじめ複数の型が実在しますが、整体院がどれを使うべきかについての公式見解はありません。 医療法第3条第1項は病院・診療所に紛らわしい名称を禁じており、MedicalBusinessを推奨する根拠は乏しいのが実情です。原文は次のとおりです。
- 「LocalBusiness の定義の全文は schema.org/LocalBusiness で確認できます。各ローカル ビジネスの拠点を LocalBusiness タイプとして定義します。できる限り具体的な LocalBusiness サブタイプ(Restaurant、DaySpa、HealthClub など)を使用してください。」
出典:Google のローカル検索結果のランキングを改善するヒント|Google ビジネス プロフィール ヘルプ、マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー|Google マップ ヘルプ、有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成|Google 検索セントラル、ローカル ビジネス(LocalBusiness)の構造化データ|Google 検索セントラル
合同会社ワンブリマーケティングについて
合同会社ワンブリマーケティングは、SEO・オウンドメディア運用・生成AI活用支援を専門とする企業です。整体院のように、業法上の広告規制がなくても、あはき・柔整広告ガイドラインⅦ章や景品表示法といった一般法・自主基準を同時に読む必要がある事業者を中心に、キーワード設計から記事制作、更新運用の設計までを一貫して支援しています。自院に合った進め方を相談したい方は、お問い合わせからご連絡ください。
整体院のSEO対策についてよくある質問
Q1. 整体院に医療広告ガイドラインやあはき・柔整広告ガイドラインは適用されますか?
医療広告等ガイドラインが対象とするのは病院・診療所や医業に関する広告で、整体院はこの定義に当たりません。一方、令和7年2月18日発出のあはき・柔整広告ガイドラインは、整体・カイロを含む「無資格者」の広告についてⅦ章を設けています。 ただし対整体院の位置づけは「関係団体等による自主的な取組を促すもの」にとどまる点に注意してください。
Q2. 整体院の広告に法律上の規制はまったくないのですか?
柔整法・あはき法のような業法上の広告規制は、整体院には及びません。ただし景品表示法第5条第1号(優良誤認表示の禁止)や医療法第3条第1項(病院・診療所に紛らわしい名称の禁止)は、業種を問わず整体院にも及びます。 なお健康増進法第65条が対象とするのは「食品として販売に供する物」であり、施術という役務は条文の文言の外です。
Q3. 整体院と整骨院でサイトに書ける内容・広告規制は同じですか?
柔道整復師法第24条・あはき法第7条の対象事項は「柔道整復の業務又は施術所」「あん摩業…又はこれらの施術所」であり、整体業・整体院は文言に含まれていません。整骨院はこれらの条文の名宛人として広告できる事項が限定される規制を受けますが、整体院は業法上その規制の外にあります。 この構造の違いが、両者の決定的な差です。
Q4. 整体院のサイトで「腰痛」「肩こり」といった症状名を使うのは禁止されていますか?
あはき・柔整広告ガイドラインⅦ.3(6)は、「腰痛」「膝の痛み」等の痛み症状や、慢性の「肩こり・疲労」等の症状に対する施術の表現を「広告及びウェブサイト等に表現すべきでない」としています。ただし対整体院の位置づけは自主的取組の要請であり、法的に禁止されているわけではありません。 症状名に代えて施術内容や来院の目的でページを構成する方法も検討しておきましょう。
Q5. 整体院が「治る」「効果がある」と書くとどうなりますか?
景品表示法第5条第1号は、実際より著しく優れていると示す表示(優良誤認表示)を、業種を問わず禁止しています。「治る」「必ず改善する」等の断定表現が事実と異なれば、この規定に触れるおそれがあります。 柔整法・あはき法の広告規制が及ばないことと、景品表示法が及ぶことは別問題であり、切り分けて整理しておきましょう。
まとめ:整体院のSEOは規制の位置づけを正しく理解して進めよう
整体院には柔道整復師法・あはき法のような業法上の広告規制は及びませんが、無規制というわけではありません。あはき・柔整広告ガイドラインⅦ章は整体院を含む「無資格者」の広告を扱い、症状名を掲げた表現はウェブサイトにも用いるべきでないとされています。景品表示法や医療法など一般法は業種を問わず及ぶため、優良誤認表示や紛らわしい屋号への配慮も欠かせないポイントです。まずは自院サイトの表現を本記事のOK・NGの整理と照らして見直し、判断に迷う箇所は専門家に相談することから始めましょう。
統計に頼れない業種の集客戦略では、市場規模の代わりに何を指標にするかが最初の論点になります。無資格でも開業できる業種の支援では、公的統計がない代わりに検索ボリュームと口コミ件数の推移を市場規模の代理指標として使い、施策の優先順位づけに活用しました。統計に頼れない業種ほど、自社で計測できる指標を先に持っておくべきだと考えています。